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農業・農村・JA

農山漁村地域における生活の安定に資するべく、地域再生に対するJAをはじめとした様々な取組みについて調査・研究を行っています。

食品安全への消費者意識とコスト負担意向-アンケート調査による食品安全リスクカバーニーズの考察-

発表者 渡辺 靖仁
発表誌 共済総合研究 第54号

概要

目次
  1. はじめに
  2. アンケート調査結果の概要
  3. 品目と安全性確保のためのコスト負担
  4. ブランド・農業体験と安全性確保のためのコスト負担
  5. フードチェインのリスク補償の意義
  6. おわりに

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1.課題

日本の無類に豊かな食生活は、フードシステムの高度化によって支えられている。その結果、食品はいわゆる信用財としての性格を強めた。近年多発した食品偽装事件などから、消費者の安全と安心を求める度合いはいっそう高まった。そこで当研究所では、平成20年12月に、食品安全に関する消費者の意識調査をおこなった。調査の目的は、(1)消費者の安全性意識の属性別特性、(2)安全確保のためのコスト負担の意向とその程度、(3)食品のフードチェイン上のリスクをカバーする何らかの補償商品へのニーズ、もしくはその商品提供による安全性確保の努力の必要性、の3つを探ることにある。

2.方法

一般消費者と医療関係従事者に対して、Webによる自記式記入法でアンケート調査を行った。一般消費者は層化3段による住民基本台帳の構成比に合わせた。アンケート調査結果に対して、樹形図やベイジアンネットワークによるデータ解析を行い、特記すべき事項を見出した。

3.結果

アンケート結果から、(1)8割に及ぶ食への不安感、(2)安全性の表記があれば特売品よりも10%高くても購入する、(3)安全性確保の情報提供のためには5%程度までのトレイサビリティシステム経費の上乗せを容認する、(4)少数ではあるものの、安全性を高める表記があるならより高いものを買う人たちはトレイサビリティのコストアップ許容水準がさらに高い、(5)一般生活者では価格に厳しい目を注ぐ集団が多くいる一方、価格よりブランドを重視する集団には安全のためのコスト負担がかなり高くても容認する傾向などが明らかになった。

4.考察

アンケートによる消費側の食への不安感とそのための負担の程度が明らかになった。生産者側では、周知の通り、近年、農産物の生産者・流通業者の直接販売や食品の加工・小売業界の生産段階への参入などのようにフードチェインが一気に流動化した。食品の安全性の向上を図るためである。この流動化に対応して、補償業務を営む農協共済事業・関連保険会社が、食品の生産・流通・販売工程をセットでとらえ、これにかかる純粋リスクを一定の範囲でカバーし、事業者の経営安定に資するのが、フードチェイン一貫補償保険の考えである。もちろん、食品には品質差とこれを反映した価格差があるうえ、生産者の生産ノウハウにも格差が大きい。消費者の中で、価格を中心に選ぶ集団もいれば、ブランド価値や味を重視する集団がいることにも照応している。需要に応じようとする生産構造だからである。このため、フードチェイン一貫補償といっても、カバーするリスクと範囲、保険料にももちろん差がある。 そこで、補償の厚みによって、(1)ブランド価値カバー保険、(2)標準的包括補償保険、(3)出品ワンコイン保険(直売所など想定)、(4)事後処理代行サービス、の4領域が考えられる。この保険加入と加入の表示により消費者の食に関する不安感を緩和し、産地の発展を下支えする効果の発現まで射程においている。すなわちリスクコミュニケーションのツールとして本保険を位置づけるマーケティングを展開することが有用と主張した。