共済総合研究

当研究所研究員の調査・研究論文等を発表するための研究理論誌です。当研究所の研究領域に関係する学者・研究者からの寄稿論文も掲載しています。(年2回発行)

共済総合研究 Vol.67(2013.9)

共済総合研究 Vol.67(2013.9)

ジャンル タイトル 研究者(窓口) 掲載ページ
提言 食料の安定供給に向けて(雑感)
-石油危機・穀物ショックから40年- [PDF 1.8MB]

アブストラクト
理事長
町田 勝弘
2P~7P
特集 遺伝子組換え作物をめぐる世界の状況について [PDF 1.8MB]
アブストラクト
宮城大学 食産業学部 教授
三石 誠司
(髙木 英彰)
8P~40P
特集 成熟社会における農村の経済社会と地産地消 [PDF 1.2MB]
アブストラクト
筑波大学 名誉教授
永木 正和
(髙木 英彰)
41P~60P
研究報告 農業者生産者組織の協同組合化のための課題 [PDF 824KB]
アブストラクト
(社)韓国協同組合研究所
金 奇秦(著)
東京大学大学院 農学生命科学研究科 農学特定研究員
李 相旭(訳)
東京大学大学院 農学生命科学研究科 教授/一般社団法人JA共済総合研究所 客員研究員
松本 武祝(訳)
(髙木 英彰)
61P~77P
研究報告 百姓株式と村落の共済機能の起源
―上名栗村古組の村落と小百姓の家― [PDF 1MB]

アブストラクト
東京大学大学院 農学生命科学研究科 講師/一般社団法人JA共済総合研究所 客員研究員
戸石 七生
(髙木 英彰)
78P~102P
研究報告 オランダ医療制度 [PDF 1.8MB]
アブストラクト
多摩大学 医療・介護ソリューション研究所 教授/一般社団法人JA共済総合研究所 客員研究員
真野 俊樹
(川井 真)
103P~121P
研究報告 IASBの保険会計再公開草案における有配当保険の会計処理について [PDF 623KB]
アブストラクト
猪ノ口 勝徳 122P~142P
研究報告 自然災害全般にかかる損害保障の動向とあり方
―地震損害の検証および異常気象を踏まえて― [PDF 2MB]

アブストラクト
渡部 英洋 143P~162P
研究報告 「異次元金融緩和」の理論的背景と政策効果について [PDF 1.1MB]
アブストラクト
木下 茂 163P~171P
研究報告 判例にみる共同不法行為
―要件論を中心として― [PDF 405KB]

アブストラクト
加藤 正男 172P~186P

文責 調査研究部

食料の安定供給に向けて(雑感)
-石油危機・穀物ショックから40年- [PDF 1.8MB]

(キーワード) 食料・農業問題、食料の安定供給

(アブストラクト)安全な食品を安定的に供給することの大切さは、いつの時代も変わらない。歴史的経過を見ると、世界の穀物需給の状況の変化により、国民の食料問題への関心度も大きく変化しているのではないか。TPP協定交渉などを契機として多くの国民に食料・農業問題に関心を持ってもらい、国民的合意の下で食料の安定供給に向けた取組みが進められることを願う。

遺伝子組換え作物をめぐる世界の状況について [PDF 1.8MB]

(キーワード) 農産物貿易、食の安全・安心

(アブストラクト)飼料穀物の多くを輸入に頼る日本は、世界的な遺伝子組換え市場の拡大を背景に、 遺伝子組換え品種の使用を前提とせざるを得ない状況になっている。国内的には安全 性審査が承認済み作物の扱いや表示問題、国と地方の温度差の解消など、国際的には 品種開発競争や新技術の登場に対するわが国の対応など、短期的にも中長期的にも複数の課題に直面している。こうした状況に取り組むためには、安全性に関する科学的 かつ社会経済情勢を踏まえた真摯な議論と、安心を得るためのコミュニケーションが 重要となる。未知の技術やその社会での活用に対していたずらに恐れるだけでなく、 社会生活の中に有益に導入するための意思決定の仕組みを作ることが必要である。

成熟社会における農村の経済社会と地産地消 [PDF 1.2MB]

(キーワード) 地産地消、地域社会

(アブストラクト)高齢化・過疎化と生産活動の衰退、コミュニティ活力の退化により、多くの農村で経済社会は脆弱化の一途にある。自制のないグローバリゼーションへの対抗軸として、地縁結合農村コミュニティの活動を盛り立てて、地域自立的な経済圏を構築したい。これこそが「地域主義」である。その中心に「地産地消」が位置付けられると考える。これを「コミュニティ経済」として発展させたい。

農業者生産者組織の協同組合化のための課題 [PDF 824KB]

(キーワード) 協同組合基本法、協同組合間連携

(アブストラクト)韓国では2011年の協同組合基本法制定により協同組合が自由かつ多様に設立できるようになり、既存農協にとってはその役割、戦略、新規協同組合との関係性をいかに整理するかが大きなイシューとなった。新規協同組合の類型によっては既存の農協事業と直接競合する場合もあるが、営農組合法人の失敗例に学び、相互協力関係を築くことによってシナジー効果を追求することもできる。協同組合精神の原点に常に立ち返って協同組合文化を共有することで両者の組織をともに活性化すべきである。

百姓株式と村落の共済機能の起源
―上名栗村古組の村落と小百姓の家― [PDF 1MB]

(キーワード) 百姓株式、村落共同体、共済の起源

(アブストラクト)中近世移行期と近世前期において、村の土地に人的資源を定着させる村の政策として百姓株式制度=小農の家が成立したという日本の村落の歴史を振り返ってみると、村落の共済機能こそが人と人、人と土地を結び付ける重要な役割を担ってきたことがわかる。集落営農も共済意識のうえに成立している。日本の農村社会が過疎や対外通商関係により動揺している現在、改めてそのことを考える必要がある。

オランダ医療制度 [PDF 1.8MB]

(キーワード) 海外医療制度、医療保険民営化

(アブストラクト)オランダは、「オランダ病」と呼ばれる経済の低迷状態から奇跡的な回復を遂げた国であり、短期保険制度の運用方法等が日本の医療制度に近似している。この国の福祉・医療の歴史や医療制度の内容が、高齢化がさらに進展し、医療費抑制が課題となっている日本に、「短期保険のオペレーションの民営化」「特別医療保険(含む介護保険)から税財源、サービス提供の責任の、地方自治体への移行」「GP制度」についての示唆を与える。

IASBの保険会計再公開草案における有配当保険の会計処理について [PDF 623KB]

(キーワード) 国際会計基準

(アブストラクト)先ごろ公表された標記再公開草案で提案されている有配当保険の責任準備金の会計処理を説明し、それが日本の会計実務に与える影響につき考察を行うものである。保険会社が積み立てる責任準備金は債券や株式等の金融商品に投資されるが、有配当保険は投資で得られる収益をもとに契約者配当を支払うため、有配当保険の責任準備金の会計処理は投資資産との対応関係を考慮した会計処理とすることが必要になる。再公開草案はこの点を踏まえた提案内容になっているが、会計処理内容が複雑なため、引き続き検討が必要だろうと思われる。

自然災害全般にかかる損害保障の動向とあり方
―地震損害の検証および異常気象を踏まえて― [PDF 2MB]

(キーワード) 自然災害保障

(アブストラクト)東日本大震災を契機とした検証により、地震発生の不確実性とともに南海トラフ等の想定被害額の巨大化が明らかとなった。地震災害の保障に国が関与するにあたっては、国民全体にとって公平性の高い損害てん補のあり方を検討する必要がある。一方で地震以外の自然災害について、気候変動・異常気象によって将来的にも脅威となりつつある。災害頻発国の我が国においては、地震のみでなく、全ての災害を自動保障する共済保険制度が、国民生活の再建・財政規律の維持の両面から求められている。

「異次元金融緩和」の理論的背景と政策効果について [PDF 1.1MB]

(キーワード) 異次元緩和、流動性の罠、インフレ期待

(アブストラクト)このところデフレ状況に変化が生じているが、日銀の「異次元緩和」の先行きには依然不透明感が強い。そこで本稿では、「異次元緩和」の理論的背景を改めて振り返ってみた。具体的には、日本経済が「流動性の罠」に陥っていたという前提では、人々のインフレ期待に働きかける政策が有効である点をクルーグマンのモデルに沿って確認した。後半の実証分析では、かつて日銀が実施した量的緩和の効果を地域経済につき統計的に検証した。

判例にみる共同不法行為
―要件論を中心として― [PDF 405KB]

(キーワード) 共同不法行為、判例

(アブストラクト)自動車共済における一人の交通事故被害者に対して、複数の交通事故が時と場所を異にして発生した場合や、交通事故と医療過誤が競合した場合などに、これら複数の加害行為が共同不法行為として問題になることがある。しかし、共同不法行為論については学説においても様々な見解が展開されており一致をみていない。そこで裁判においては、どのような事実・要素のもとに判断をしているのか、訴訟における共同不法行為成立の要件をまとめた。