『共済総研レポート』震災復興現地レポート・アーカイブ

本サイトについて

東北地方を中心に広範囲にわたり甚大な被害を及ぼした東日本大震災ー。
本サイトでは、これまで当研究所機関誌『共済総研レポート』に掲載した「震災復興現地レポート」と関連する『日本農業新聞』の記事をまとめて閲覧することができます。
被災地における復旧・復興への道のりには、これからの日本の地域社会創りにとっても、重要な示唆が含まれていると考えます。震災の経験を風化させることなく、将来に活かす端緒として、本サイトをご活用いただけましたら幸いです。

2016(平成28)年3月11日 JA共済総合研究所 震災復興調査班

「震災復興現地調査」の取り組み経過

本調査は、東日本大震災・福島第一原発事故の被災地における地域住民や農業者の生活・農業の復旧・復興に向けた取り組み等についての現地ヒアリング調査です。
調査開始は2013(平成25)年。
調査対象は、岩手県 花巻地域、宮城県 仙台・石巻地域、福島県 伊達・相馬地域。調査結果は、『共済総研レポート』誌上の「震災復興現地レポート」として、随時公開しています。

最新調査

調査時期  2017年6月27日(火)~28日(水)
調 査 先
JAいわて花巻
本店(花巻市)
母ちゃんハウスだぁすこ沿岸店(大槌町)
遠野支店(遠野市)
調査概要
JAいわて花巻が運営する農産物直売所「母ちゃんハウスだぁすこ沿岸店」は2016年1月の開店から1年半が経過し、産地直売所や食堂などを通じて、地域の営農振興のみならず、くらしの拠り所としても存在感をさらに高めています。
今回の調査では、大槌町内の農事組合法人が震災発生直後から被災住民のニーズに応えて取り組み、だぁすこ沿岸店開店に伴いJAに事業移管された移動販売に注目し、仮設住宅や復興住宅を巡回する移動販売車に同行いたしました。
野菜、米、惣菜などをぎっしり積み込んだ軽トラックはお昼時の11時から14時、月曜から金曜は大槌町内各地を、土曜は釜石市鵜住居方面を運行しています。曜日毎にルートが異なり、近所にスーパーマーケットや商店街がないため買い物に不便を感じる住民の方々は、週1回の巡回を大変楽しみにしています。
客数や売上は日によって異なりますが、1日の売上は3万円から10万円弱のあいだを推移しています。運行の途中で商品が足りなくなると、店舗に一旦戻って補充することもあります。雨の日も風の日も、地域で移動販売車を待っている人々がいる限り、JAは協同の精神を発揮し、採算は厳しいながらも「買い物弱者」を支え続けています。

※本調査結果については『共済総研レポート』№153(2017年10月発行)に掲載しております。

母ちゃんハウスだぁすこ
沿岸店

移動販売車に野菜、米、惣菜、
切り花などを積み込む

仮設住宅でのくらしを支える
移動販売車

調査時期  2016年6月27日(月)~28日(火)
調 査 先
JAいわて花巻
本店(花巻市)
大槌支店・東部地区営農センター・母ちゃんハウスだぁすこ沿岸店(大槌町)
鵜住居支店・釜石支店(釜石市)
調査概要
2016年1月、大槌町に開店したJAの農産物直売所「母ちゃんハウスだぁすこ沿岸店」。従来、農業生産が少なかった沿岸部の農業振興の拠点です。身近な販売場所の提供とともに、精力的な営農支援が組合員農家に喜ばれ、生産意欲を高めています。隣接する釜石市は2019年ラグビーワールドカップの開催都市の一つで、それまでに沿岸店のすぐ近くには三陸沿岸道路・大槌ICが開設予定です。集客増が見込めるなか、開店から約半年で野菜は地場産が4割まで増えました。出荷農産物を有効活用して開発した加工品「野菜まるごとスムージー」や、地元漁協と連携した「いか餃子」などは地域の新名物としたい考えで、食を核に元気な地域を発信する取組みが進められています。一方、沿岸3支店のうち鵜住居支店はいまだ仮設事務所です。地域においても仮設住宅から復興住宅への転居が進むなかで、住民はまたも、ばらばらになり地域コミュニティの再構築を迫られています。沿岸店では地域で孤立する人を増やさないよう、コミュニティづくりのきっかけを提供する意味合いもあり、出荷農産物の宅配も行っています。

※本調査結果については『共済総研レポート』No146(2016年8月発行)に掲載しております。

母ちゃんハウスだぁすこ
沿岸店

大槌町産野菜の数々

野菜丸ごとスムージー
(苺と人参:季節限定)

被災状況

 岩手県は地震に加え、沿岸部を中心に津波によって甚大な被害が出た。震災の名称について、政府が津波についても「東日本大震災」の中に含めているのに対し、県では「東日本大震災津波」としており、津波による被害の大きさを表している。
 県のまとめ(「いわて復興の歩み」2015年12月など)によると、死者・行方不明者数は5798人。2万6165棟の住家が全壊・半壊となった。応急仮設住宅等への入居者数はピーク時(2011年10月)に4万3738人で、過半がいまだ入居中となっている。
 津波による浸水高は建物に残された浸水の痕跡などにより、同県北部から宮城県牡鹿半島にかけた三陸海岸で10~15メートルの所が多い。津波が広範囲に及んだことなどで、がれきなど618万トンの災害廃棄物処理に3年を要し、沿岸部の住宅再建や生活の安定は遅れた。県の意識調査(2015年1月~2月)によると、県全体の復旧・復興に対する県民の実感は、「遅れている」とする回答(54%)が、「進んでいる」とする回答(21%)を上回っている。しかし、その差は着実に埋まってきている。農業関係では復旧対象となった農地511ヘクタールの92%に当たる471ヘクタールが復旧済みとなっている。
 奥羽山脈沿いの秋田県境から太平洋岸まで東西120キロを管内に持つJAいわて花巻では、大槌・鵜住居・釜石の3支店で職員が亡くなるなど甚大な被害を受けた。支店の職員は自ら被災しながらも復旧に立ち上がり、震災から間もなく臨時営業を再開した。支店長らは共済事業の重要性とともに、JAの事務所が地域コミュニティの拠点になることを強く感じたという。そのことは、直売所や支店・営農センター機能を集めた沿岸営農拠点センターの整備につながった。
 同センターは全国屈指のJA農産物直売所「母ちゃんハウスだぁすこ」のノウハウを生かした。コミュニティの拠点であることに連動して、JAが合併時から掲げてきた沿岸部の園芸団地構想や、地域住民との交流を促すことにもなりそうだ。

(2016年3月11日)

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