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交通事故判例にみる低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)-交通事故との因果関係を巡る最近の判例(民事)から-

発表者 主席研究員 辻 泰
発  表 研究報告書 2008年3月


概要

1.目的

最近、外傷性頚部症候群(むち打ち損傷)の難治例の原因として低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)(以下、低髄液圧症候群という)が注目され、交通事故によるものかどうかの因果関係を争う裁判が急増している。しかし、低髄液圧症候群の診断基準は未だ確立しておらず、医学的研究が始まったところであり、多くの整形外科・脳神経外科専門医の中には、低髄液圧症候群なる病態(疾患)は存在しないとの見解すら存在する現状がある。

そこで、交通事故と低髄液圧症候群との因果関係が争われた判例を収集し、判決要旨、原告・被告の主張内容、裁判所の判断の要旨などをスライド形式でまとめた。

2.対象および方法

判例データベースとして、判例検索システムVSバージョン2007年下期(自動車保険ジャーナル)、日本法総合オンラインサービス 「Westlaw Japan」、D1-Lawインターネットサービス(第一法規株式会社)を使用し「低髄液圧症候群」or「脳脊髄液減少症」をキーワードとして、交通事故を原因とする判例を抽出し、その出典を確認した。

また、交通事故民事裁判例集、判例タイムズ、判例時報、自動車保険ジャーナル、週刊自動車保険新聞、インシュアランス、保険毎日新聞に掲載された判例を資料とした。

3.結果

収集した判例は19例であった(2008年2月末現在)。低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)の発症と交通事故との因果関係を肯定した判例が4例、否定した判例が15例であった。肯定された4例のうち1例は高裁で否定され、2例はいづれも控訴中である。肯定が確定している1例は昭和62年の判例であり、低髄液圧症候群が外傷性頚部症候群(むち打ち損傷)の難治例の原因であると注目される以前のものである。

なお、現在までに収集した判例で、交通事故との因果関係が肯定された「確定判例」は見出せなかった。

4.考察

はじめての高裁判決(平成19年2月13日福岡高判)が出されたことによって低髄液圧症候群の診断基準としては"新説"<"従来の定説"となった。そして、東京地裁民事27部(平成19年11月27日東京地判)からのはじめての判決で「現在わが国における外傷に伴う低髄液圧症候群の診断基準としては、日本神経外傷学会が組織した「頭部外傷に伴う低髄液圧症候群作業部会」の中間報告の示した診断基準が最新かつ国際頭痛分類の診断基準をふまえた客観性を有する見解であると認められる」とし、日本神経外傷学会の頭部外傷に伴う低髄液圧症候群作業部会の中間報告の『低髄液圧症候群の診断基準』を「客観性を有する見解」であるとして採用することを明示した。

今後、医学界から統一した診断基準が出されるまでは、低髄液圧症候群を拡大解釈した診断基準(暫定的な"脳脊髄液減少症ガイドライン2007")の問題点を裁判上で争い、現時点で客観性がある診断基準は、日本神経外傷学会の頭部外傷に伴う低髄液圧症候群作業部会の中間報告の「低髄液圧症候群の診断基準」であることを主張していく必要性があるものと思われる。今後、医学界で科学的根拠の示された診断基準の統一と公表を待ちたい。

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