「大産地へ」誓う トルコギキョウ生産回復じわり 生産部会立ち上げ 広域合併追い風に 東日本大震災から6年 JAふくしま未来 相馬地区

掲載日:
2017/04/19
発行元:
日本農業新聞

東日本大震災、東京電力福島第1原子力発電所事故で打撃を受けた福島県JAふくしま未来そうま地区本部管内では、トルコギキョウ産地の復活に向け生産者らが奮闘している。水稲の育苗ハウスを有効活用し、カンパニュラと組み合わせた生産体系を導入。生産部会も立ち上がり、新規生産者も増えてきた。JA合併も追い風に、大産地化を目指す。 (山崎笙吾)

震災前、福島県の切り花出荷量は6960万本(2010年度)あったが、11年度では6180万本と11%減少。特に打撃を受けたのが、トルコギキョウ(26%減)とユリ(30%減)だった。

震災前、県産トルコギキョウの2割を占めていた旧JAそうま管内では、62戸が543アールで栽培、131万本出荷していた。

飯舘村や南相馬市の一部が避難区域となり、人の立ち入りもできなくなった。旧JAそうまの出荷額1億700万円の9割を占めていた飯舘村は、避難指示のため生産がゼロに。管内では11年、栽培面積は6戸で30アール、出荷は3万本まで減少していた。

こうした中、南相馬市の内陸部で作付け制限されていた水稲の育苗ハウスを有効活用したいという農家の要望が高まった。同市の生産音が飯舘村の農家からトルコギキョウの苗を引き継いでいたこともあり、同県相双農林事務所などが、収益性が高く風評被害が少ないトルコギキョウの栽培を提案した。

同事務所などは、農家の手取りを高めるため、4月に播種(はしゅ)し、9、10月に出荷する抑制栽培と、9、10月に播種し2~5月に出荷するカンパニュラを組み合わせた生産体系を提案。冬場にトルコギキョウを生産する場合、電照と暖房が必要だが、カンパニュラだと電照だけで済む。体系は、県農業総合センターなどが農水省の委託事業を活用して確立した。

・新規の仲間も

同本部管内では、毎年1~5人の新規生産者が誕生し、15年5月にはトルコギキョウ生産部会を設立。今年度も既に3、4人の希望者が名乗りを上げる。11年に30アールまで減少した面積が、16年には126アールまで回復。25戸が、8万2000本を出荷するまでになった。

同部会の西裕視子さん(45)は、「北斗星」や「おり姫」など6品種をハウス4棟で生産する。震災直後、義父の一信さん(72)が飯舘村の知人から苗を譲り受けたことをきっかけに、ハウス2棟から生産を始めた。裕視子さんは「当時は水稲を作れず、花を作るしかなかった。生活のために何かしなくてはという思いだった」と振り返る。現在は直売所を中心に出荷する。

・高値が後押し

JAによると、トルコギキョウは、震災犠牲者への献花用などに地域の直売所でも需要が増加し、市場価格も年間の変動が少なく、高値で推移していることも生産増を後押しする。

JAそうま地区指導販売課園芸係の酒井裕二係長は「震災以後、JAも広域合併した。今度はJAとして大産地を目指す」と意気込む。

新規に取り組む農家が多いことから、生産技術向上に向け、部会が毎月勉強会を開催する。他産地を視察し、技術を学んだ。JAと同事務所は生産者を個別訪問し、一つ一つの作業を細かく指導。圃場(ほじょう)ごとの土壌分析も行い、適正施肥を実施する。

JAの出荷先、川崎花卉(かき)園芸の相嶋学執行役員は「最盛期の品質は最高」と評価。一方で「業務需要に買ってもらうには、まとまったロットがないのが課題。量を出せる産地になってほしい」と激励する。