[トップインタビュー] 法人育成を重点推進 JAいわて花巻 阿部勝昭組合長 園芸拡大し所得向上 資材費低減へ予約確保

掲載日:
2017/06/27
発行元:
日本農業新聞

岩手県のJAいわて花巻は、地域農業を支える担い手として法人の育成、販売額1億円の園芸団地育成などに力を入れる。組合員とのつながりを強くするため、役職員を挙げて現場に出向く。阿部勝昭組合長に、自己改革の戦略や今後の展望を聞いた。

――自己改革を進める中で何を重視していますか。

協同の力を最大限発揮していくべきだと考えている。共に心と力を合わせて物事を行う「協同」はもちろん、同じ条件、資格で力を合わせる「共同」、役割分担などを事前に決めて協力して働く「協働」を追求する。組合員が主役となり、目標に向かってさまざまな役割を見いだし、JAが支援していく。その一環で今、法人の設立やその後のサポートに力を入れている。

――管内の法人化はどれくらい進んでいますか。

2016年度時点で、99法人が設立した。登記や定款作りに加え、記帳や税務処理などもフォローしてきた。先行して発足した法人が新たに野菜の栽培を始めたり、農地集積を進めたりして実績を残し、法人化の利点が広まり意識が高まってきた。雇用の受け皿にもなっている。

――1億円販売の園芸団地の育成はどう進めていますか。

米価が厳しい状態の中、農家の所得を確保するには、野菜を主体に園芸品目を拡大する必要がある。法人はもちろん個人農家にも呼び掛けて、稲作との複合経営を推進し、販売額を積み重ねて1億円団地を目指す。

品目は食のトレンドを考慮して提案し、JAが責任を持って販売する。新たな品目としてアスパラガスや加工向けの春タマネギなどの産地化を進めている。

団地の育成を通じて数量を確保して供給力を高め、販路拡大につなげる。JAに出荷してもらうため、組合員とのつながりを強くしていかないといけない。これまでも全27支店の組合員と常勤役員との交流会を重ねてきた。役員が足を運び、信頼関係を強くしていくことは今後も続ける。

――資材コストの低減は、どう実践していますか。

大量購入、大量仕入れによって交渉力が生まれ、低コスト販売につながる。だから予約購買の推進に力を入れている。資材注文書の回収率は肥料で93%。農薬で88%。法人や個人農家に購買担当者が出向き、予約を取ることを重視している。注文がなければ声を掛けて呼び掛ける。そういう積み重ねが次に結び付く。

肥料は18年度分の注文書で水稲用の成分を見直し、10アール当たり10キロ投入量を減らした。計算すると13~20%のコストダウンになる。

――日欧経済連携協定(EPA)交渉や日米経済対話など貿易交渉は緊迫化しています。日本はどう対応すべきだと考えますか。

米国だけでなく欧州連合(EU)との交渉にも注意が必要と思っている。そもそも環太平洋連携協定(TPP)の合意内容は受け入れられない水準だった。畜産をはじめ大きな影響を受ける。打撃があるから、政府は一定に対策を措置した。そこは必ず遂行するべきだ。しかし、その対策で打撃が100%補えるかどうかは分からない。だからこそEUや米国との間で、TPPを超える内容の協定を結ぶことは認められない。 (聞き手・柘植昌行)

<JAの概況>

 管内は太平洋側から秋田県境まで4市2町に及ぶ。稲作と園芸、畜産の複合経営が盛ん。水田1万3500ヘクタールで主食用米や備蓄米、飼料用米、加工用米を作付け。野菜やリンドウ、リンゴなどの園芸品目も盛ん。

▼組合員数=4万1551人(正組合員2万2522人)

▼貯金残高=2587億円

▼貸出金残高=581億円

▼長期共済保有高=9812億円

▼販売品販売高=238億円

▼購買供給高=73億円

▼職員数=988人(正職員565人)

(17年2月時点)