[語る JA役員に聞く] 被災農家の支えに 所得確保へ6次化推進 福島・JAそうま今村秀身組合長

掲載日:
2015/11/17
発行元:
日本農業新聞

 JA管内の農産物販売高のうち、震災前は60%が米穀、20%が畜産で占めていた。そのため、環太平洋連携協定(TPP)によって海外から安価な米や畜産物が流入すれば、管内の農業は大打撃を受ける。

 米の特別輸入枠7万8400トンなどを踏まえると政府は交渉を譲歩したとしか思えない。到底、容認できない。まだ批准はしていない。引き続き国会決議を守るよう要請する。同時に、合意内容や国内農業への影響と今後の対策を明らかにするよう求める。

 米価下落を受け、農家の経営安定を目指して今年度から初めて飼料用米の生産を推進し、管内での飼料用米の生産面積900ヘクタールのうち、JAでは727ヘクタールの契約を農家と結んだ。せっかく取り組みが進んでいるのに、TPPの影響で畜産農家が打撃を受けたら飼料用米の需要は減ってしまう。飼料用米への交付金がいつまで続くかも不安だ。

 畜産では、子牛や飼料価格が高騰し、採算がとれない肥育牛農家が出ている。肉用牛肥育経営安定特別対策事業(新マルキン)は全額補填(ほてん)すべきだ。

 農家の経営を安定させて営農意欲を維持するためには、新マルキンや水田活用の直接支払交付金の法制化が欠かせない。

 政府は、TPPよりも東日本大震災からの復興を優先すべきだ。東京電力福島第1原子力発電所事故や津波被害の影響を受け、管内の農産物販売高は震災前の3分の1にとどまっている。農地や用水路の除染が終わっていない地域も多い。

 JAでは、被害を受けた農家の営農意欲を維持するため今も1頭当たり子牛で5万円、繁殖牛と乳用牛でそれぞれ20万円、パイプハウス1棟につき120万円を上限に助成している。「風評被害」を払拭(ふっしょく)し、農家の所得向上につなげるため、昨年6月に営農経済部に「6次産業化プロジェクト」を立ち上げた。県独自の米品種「天のつぶ」の特別純米酒やせんべい、イチジクのドライフルーツを開発した。インターネットでも販売して全国にPRしたい。

 来年3月には新ふくしま、伊達みらい、みちのく安達の3JAと合併し、JAふくしま未来が誕生する。品目ごとの販売高が増え、ブランド力が高まるのが強みだ。新JAで2018年度までに販売高が10億円以上の農産物を8品目、1億円以上を17品目つくり、6次産業化にも取り組む。

 地域農業を守るのがJAの使命だ。合併後も引き続き震災からの復興や農業の振興に全力を注ぎ組合員から信頼され、選択されるJAを目指す。

JAの概況
 ▼組合員=2万1075人(正組合員1万5335人)
 ▼貯金残高=2439億円
 ▼販売品販売高=32億円(米穀類13億円、畜産物11億円、園芸特産物8億円)
 (2015年2月末現在)