[東日本大震災4年]6次化を推進力に 米活用 酒造り手応え 派遣職員が事業後押し 復興に弾み/福島・JAそうま

掲載日:
2015/03/11
発行元:
日本農業新聞

 東日本大震災による津波被害や東京電力福島第1原子力発電所の事故の影響を受け、復興が道半ばの福島県JAそうまで、基幹作物の米を生かした酒造りや加工品作りなど農業の6次産業化が動き出した。県独自の品種「天のつぶ」を使った特別純米酒は2000本(1本720ミリリットル)を製造し、1月に完売した。農家の営農意欲や所得の向上につながる“救世主”として期待が高い。佐賀県のJAさがが派遣する職員も加わり、復興を後押しする。

 JAは昨年3月に、6次産業化商品の開発などを手掛ける営農経済部直販課を立ち上げた。6月には同課を筆頭に支店職員ら15人で6次産業化プロジェクトが始動した。

 直販課はプロジェクトの中心となって加工業者や販売先を探したり、研修を開いたりする。課長は2013年にJAさがから派遣された林修司さん(60)だ。

 震災前にJA女性部などが取り組んできた農産物加工を復活させようと、商品開発に向けて検討。地元産米を使った酒造りに乗り出した。

 米を基幹作物とする管内の水稲作付面積は震災前の10年産で約8500ヘクタールあった。11年産は約1700ヘクタール、14年産で約2400ヘクタールとなっている。

 林課長は被災地で暮らし生産者と触れ合う中で、地域の元気を取り戻すため「新しい挑戦をするしかないと必死だった。JA組織の一員として事業に取り組んできた」と強調する。

 日本酒の醸造は同県浪江町で被災し、山形県で蔵を構えた鈴木酒造店に依頼。商品名を品種名と同じ「天のつぶ」とした。追加で製造し3月下旬にも2000本が完成する予定だ。さらに「天のつぶ」を使ったせんべい、イチジクのドライフルーツなどを3月下旬に販売する計画だ。

 営農経済部の西幸夫次長は米の加工や販売などで「林課長の人脈が生きた」と感謝し、「風評被害を払拭(ふっしょく)するには時間がかかるが、新商品や原料に関する地道な説明やPRを通じて消費者理解を進めたい」と話す。