[再生への歩み 農林中金の支援](中)ミニトマト栽培 核に 雇用創出し地域活性化/仙台市・荒浜集落営農組合

掲載日:
2014/08/14
発行元:
日本農業新聞

 仙台市の荒浜集落営農組合は、営農再開から2年目を迎えた。土地利用型だけでなく、雇用創出も視野に園芸作物としてミニトマトの養液土耕栽培を開始。地元の市立荒浜小学校の児童らに農業体験も行う。組合やJA仙台などが取り組む「荒浜プロジェクト」を通じ、農業の復興と地域コミュニティーの再生を進めている。

 荒浜地区は、水稲や転作大豆を主に作付けていたが、東日本大震災で180ヘクタールの農地全てが津波による被害を受けた。JA管内では2000ヘクタールの農地が津波被害を受けた中で、特に被害が大きかった。農機が流され、担い手が亡くなり営農再開も難しい状況だった。営農組合の佐藤善一組合長は「当初、ここで営農再開できると思わなかった」と振り返る。

 「残ったわれわれがどうにかしなければならない」(佐藤組合長)との思いから、震災から2年後の2013年、大豆栽培の再開にこぎ着けた。組合で作業するメンバーは現在15人ほど。うち3人は新たな担い手だ。JAが国の事業で臨時職員として雇用し、組合に派遣している。組合は15年1月の法人化を目指しており、法人化後にこの3人を雇用する予定だ。

 復興を目指す上で検討してきたのが園芸作物の導入だ。法人化を目指す中、周年栽培で所得を増やして地域に雇用も生み出したい、後継者を増やしたいという願いがある。

 今期は水稲も再開、計約50ヘクタールで営農する。期待のミニトマトは長円形の「アンジェレ」を14年度から導入。稲の育苗を終えたハウスを活用し、養液土耕栽培する。面積は10アールで、全量がJA全農との契約販売だ。7月中旬から10月まで収穫。その後はハウス内でニンジンなどの生産を計画している。

 栽培キットの費用は、農林中央金庫の復興支援プログラムの一つ「地域復興事業支援」による助成や、全農の助成を活用した。農林中金は組合が使う事務用机やいす、書庫、下足箱など備品の費用も助成した。

 農業復興を通じて同地区の集落機能も再生しようと、13年2月に農家やJA、東北大学、仙台農業改良普及センター、仙台市が「荒浜プロジェクト」を立ち上げた。その一環で、組合は地域貢献にも取り組む。荒浜小学校の児童に、トマト植え付けやイチゴの収穫といった農業体験や、JA直売所での販売体験をしてもらっている。佐藤組合長は「営農組合のメンバーはみな小学校の卒業生。食農教育に協力したい」と話す。

 JAは組合の法人化や試験作物の選定・導入などをサポートする。JA総務部の堀江久喜部長は「農地が回復してきたことで、もう一度農業をやろうという意識に変わってきた」という。JAの遠藤睦朗組合長は「農地を守るため、JAとして強力に支援したい」と話す。組合では16年には、100ヘクタールで作業することを計画している。