津波被災田200ヘクタール復旧 稲作再興へJA奮闘/福島・JAそうま

掲載日:
2013/11/16
発行元:
日本農業新聞

 東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所事故の被害を受けた福島県のJAそうまは、農地復旧の専属班を設けて農家の早期営農再開を後押しすると同時に、農地データの収集や米の全量検査の実施で「風評被害」の克服に取り組む。今年の米の作付け2142ヘクタールは、震災前の27%にとどまる。時間の経過とともに離農が進む中、JAは「農家の営農意欲を何とかつなぎ止めたい」と奮闘する。

 JA管内4市町村のうち南相馬市と飯舘村は、原発事故の影響で今年も全域で作付けができない。同市を含む相馬市、新地町の沿岸部は津波被害を受けた農地の復旧作業が続く。

 JAは、「災害農地除塩・除染対策班」を12年2月に発足させ、専従職員4人を配置した。津波被災田の復旧事業を行政から受託し、被災者支援のため農家らに作業を振り分ける。JA出資法人にも依頼して200ヘクタールの作業を終え年度内にさらに40ヘクタールを復旧させる。

 しかし、農地除染は思うように進んでいない。除染で発生する汚染廃棄物の一時保管場所や作業員の確保が難しいことが原因。「風評被害」への懸念から「営農を再開するには、検査で不検出となる米を確実に生産できる状況を整えてほしい」(南相馬市の農業法人代表)との声も強い。

 こうした状況を踏まえJAは、今年度、国から委託を受けて、同市の123ヘクタールの農地で実証栽培に取り組んだ。土壌や空間の放射線量が比較的高い地域で、塩化カリウムなどを施用して米のセシウム吸収を抑制できるかを調べる。土壌や玄米の放射性物質濃度などのデータを取りまとめ、国や県に提供している。

 また、放射性物質が基準値以下の米だけを流通させるため、全量全袋検査を徹底する。同対策班の西幸夫班長は「稲作を回復できるかが地域の復興に大きく影響する。できる対策を地道に続けたい」と語る。