JA大会 大震災・原発事故からの再生と次代へつなぐ協同/直ちに復旧 農業再生

掲載日:
2012/11/17
発行元:
日本農業新聞

 「大震災・原発事故からの再生と次代へつなぐ協同」をテーマに第38回JA福島大会が16日、福島市飯坂町の「パルセいいざか」で開かれた。約1200人が参加し、今後3カ年の運動方針を決めた。農業基盤の速やかな復旧と「福島ブランド」の信頼回復、地域社会にとってかけがえのない存在としてのJAづくりや新たな組織体制の実現、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加断固反対などを決議した。大会の模様を紹介する。

・展望 協同の心 次代に

 JA福島中央会の庄條徳一会長は「東日本大震災・原発事故から1年8カ月が経過したが、復旧・復興の取り組みが遅々として進んでいない」と国と東電の迅速な対応を訴えるとともに、大会の実践テーマを「大震災・原発事故からの再生と次代へつなぐ協同」と定め、「実践課題を共有し、組織・事業活動を展開しよう」と力強くJAグループ福島の展望を示した。

・農業復興 JAごとに戦略

 JA会津いいでの長谷川一雄組合長は、大会議案の柱となっている消費者と共生する「安全・安心なふくしま農業の復興」に関する意見表明を行った。

 「JAグループ福島は、本県農業の復興に向け、JAグループ福島復興ビジョンを策定し、実践している。今こそ、JAの使命である地域農業振興に向け、各JAがその戦略の見直しを行い実践することが重要である。諸課題解決に向け、組合員の結集と参画を進め、JA役職員が一丸となって復興へ取り組む」と決意を述べた。

・地域社会再生 支店拠点に活動

 JA福島女性部協議会の大川原けい子会長は「安心して暮らせる地域社会再生」への貢献に関する意見表明を行った。

 「わが国は、格差社会の拡大と地域経済の疲弊、少子高齢化の中で農村社会が崩壊の危機にある。しかし、東日本大震災を契機に、助け合い・絆などの大切さが再認識されている。組合員・地域住民の生活維持・再生を支援するため、JA地域くらし戦略を策定し、支店を拠点としたJAくらしの活動に主体的に取り組み、安心して暮らせる地域社会づくりに貢献していく」と述べた。

・JA再構築 まずは人づくり

 JA郡山市の結城政美組合長は、組合員・利用者の「営農とくらしを守る協同組合」の再構築に関する意見表明を行った。

 「現在、JAグループ福島は三つの危機に直面している。第1は、少子高齢化による組織基盤の脆弱(ぜいじゃく)化であり、第2は、JAに対する満足度と信頼感の低下、最後が大震災と原発事故の影響によるJA事業・経営の環境悪化である。JAグループ福島の復興ビジョンは10年後の目指す姿を示した。そのために、協同組合らしい人づくりと、組合員・利用者のための強固な経営基盤の確立に取り組む」と決意を述べた。

・新たな組織体制 連帯感持ち行動

 JAいわき市の甲高光会長は「JAグループ福島の新たな組織体制の実現」に関する意見表明を行った。

 「私たちの農業協同組合は、その時々の状況下で、果たすべき役割がある。今、復興の先行きが見えない中で、県下JAは連帯感を発揮し、団結しなければならない。本日、4JA構想が示された。多様なニーズを持つ組合員や利用者に理解され、参加と協力が得られる『目指すべきJA』を実現するために合併をする。JAのトップとして誠心誠意取り組む」と決意を述べた。

・決議 農政運動に全力

 JA会津みなみの星安博組合長が「環太平洋連携協定(TPP)交渉については、野田佳彦首相が、オバマ大統領も参加する18日からの東アジア首脳会議で、交渉参加を表明することも否めず、予断を許さない状況にある。TPP交渉は、わが国の農業だけでなく、医療・保険など安全・安心な国民の暮らしの根底に関わる制度をも崩壊させかねない」と訴えた。

 特に、震災・原発事故からの復興も進んでいない中、優先すべき国政の課題は、原発事故の収束と復興対策の促進で、TPP交渉参加には断固反対である。このためわれわれは、多くの県民の理解と支持を得て、このたびの総選挙と次期参議院選挙も含め最大限の農政運動を展開するとの特別決議を採択した。 地域農業、地域くらし、経営基盤の三つの戦略や原発事故補償対策、脱原発などの取り組み実践と新たな組織体制について、JAグループ福島が目指す姿の実現に向け満場一致で大会議案を採択した。

・実践 各地の事例報告

 JAそうま営農経済部災害対策部署の西幸夫班長が「除塩・除染の取り組みを通じた農業復興支援」について実践事例報告をした。その他、JA会津みどり新鶴総合支店の齋藤学営農課長が「集落の話し合いから始まる担い手づくり支援の取り組み」、JAたむら営農経済部の佐久間浩幸部長が「高齢者福祉事業の展開」、JAみちのく安達企画経理課の青柳匡志課長が「JAらしさを発揮できる支店づくりを目指して」について分かりやすく報告した。

・期待 高校生 知恵絞る

 農業後継者育英賞受賞者2組の研究発表が行われた。プロジェクト発表「食料・生産の部」では磐城農業高校の小川幸恵さんら5人の生徒が、「復活! いわき梨」と題して、規格外品でなしジャムの商品化、ブランド化への挑戦を語った。「文化・生活の部」では、福島明成高校の三澤愛歌さんら5人の生徒が「花で心を癒します仮設住宅に笑顔を」と題して、東日本大震災のため避難してきた仮設住宅の人たちに花のプランターを贈呈するフラワーセラピーへの挑戦を発表した。

・披露

 大会で農業後継者育英賞を受賞した磐城農業高校で開発した6次化商品でいわき梨を使った「なしジャム」が展示・販売された。1瓶(200グラム)250円。

 大会宣言

 本日、われわれJAグループ福島の代表者は、第38回JA福島大会において「大震災・原発事故からの再生と次代へつなぐ協同」および「JAグループ福島の新たな組織体制の実現」に向けた実践について決議した。

 第38回JA福島大会決議は、農業生産基盤の復旧・復興、「福島ブランド」の信頼回復ならびに原発事故損害の万全な補償対策を柱とする大震災・原発事故からの再生を最優先課題として、さらに、地域農業・くらし・経営基盤の3分野における戦略の策定と実践を通じ、農業・地域を「次代へつなぐ」ことを目指すものである。

 あわせて、JAグループ福島の新たな組織体制(4JA構想)の実現を通じて強固な組織・事業基盤を確立し、将来的にも組合員、地域社会から最も信頼され、第1に選ばれるJAづくりを目指すものである。

 また、原発事故という未曽有の事態に直面したことから、「脱原発を目指すべき」とし自ら循環型社会への取り組みを行うこととした。

 このたびの大震災・原発事故は、さまざまな支援活動を通じ「つながり」「助け合い」「仲間」の大切さを再認識する契機ともなった。また今年は、国連が定めた国際協同組合年でもある。われわれはこの機会に改めて協同組合の果たすべき役割について自覚するとともに、誇りと確信をもち、その思いを「次代に」つないでいかなければならない。

 組合員・役職員は今大会決議の意義と目標を共有しながら、決議事項の着実な実践に向けてJAグループ福島一丸となって取り組んでいくものとする。

 以上、宣言する
平成24年11月16日
第38回JA福島大会