生活再建を支援 心のよりどころ 被災支店営業再開 地域励ます/JAいわて花巻

掲載日:
2012/08/25
発行元:
日本農業新聞

 岩手県のJAいわて花巻は東日本大震災で甚大な被害を受けた沿岸部の3支店全てで営業を再開し、被災者の生活再建を支える。信用・共済事業を通じて経済的にサポートするだけでなく、自らも被災した職員が親身に対応し、地域住民の精神的なよりどころにもなっている。

 釜石市の鵜住居地区。仮設住宅のそばにJA鵜住居支店の新しい店舗がある。6月にオープン。11人の職員が窓口や渉外担当として対応する。現金自動預払機(ATM)を併設し、被災前と同等の機能を回復した。

 中心市街地にあった支店は津波で全壊。17人の職員のうち4人が亡くなった。昨年5月にプレハブ施設で営業を再開したが、端末機械がなく当日中に現金を引き出せないなどの制約があった。

 利用者の小澤厚子さん(63)は「支店ができて格段に便利になった。いつも親身に相談に乗ってくれて安心感がある」と喜ぶ。小澤さんは津波で自宅が全壊。JAの建物更生共済に加入していたため、自宅を再建することができた。新しい家も共済に加入した。

 自らも家を失った同支店の菊池喜江子支店長代理は「窓口で震災当時の話をする方もいる。少しでも精神的なよりどころになれれば、と心掛けている」と話す。同じく自宅が全壊した小笠原眞紀雄支店長も「自分たちも被災し、黙っていると涙が出る。それでも進まなければならない。JA事業を通じて復興の役に立ちたい」と力を込める。

 津波被害を受けた釜石支店は昨年3月末、大槌支店は同6月までに臨時店舗で営業を再開。同JAの高橋勉専務は「支店は地域が活動し農業が元気になるための拠点。復旧・復興を最優先に全力を挙げている」と話す。