きょう県復興大会 決意胸に結集/安全・安心 確保に全力

掲載日:
2012/03/17
発行元:
日本農業新聞

 JAグループ福島と県森連、県漁連は17日、「福島県農林水産業復興大会」を二本松市の二本松市民会館で開き、東日本大震災発生から1年を迎えた節目に、復興への決意を共有してまい進することを確認する。県農林水産業関係団体の組合員・役職員ら1000人が結集。大会に先駆け、昨年3月11日から1年たったJAグループ福島の復興に向けた主な取り組みと行政の支援事業などについて、事例紹介を交え特集する。

・農地除染 急ピッチ JA伊達みらい 果樹園の9割終了

 東京電力福島第1原子力発電所の事故を受けて、県内の農地除染作業が進んでいる。果樹・園芸産地のJA伊達みらいは、昨年12月から2200ヘクタール、延べ約3万5000人が果樹の除染作業に取り組み、約90%以上の除染を終えた。

 除染作業は過酷を極め、極寒の中、園地の傾斜と高所作業、高圧洗浄機の圧力に耐えながら行われた。

 2012年産を消費者に安心して食べてもらうため、以前の大地を取り戻そうと一歩一歩踏みだし始めている。モニタリングカーで管内全域の空間線量測定や土壌マップ作成を進める一方、11年度のJA復興事業で、ハウス・雨よけハウスなど5.4ヘクタールの新規・増設をした。キュウリの雨よけ栽培では11年度、12人の新規栽培者が誕生した。

 また、果樹の剪定(せんてい)枝処理に向けチップ化にも取り組んでいる。JAの数又清市福島原発震災担当参与は「全ての品目について、100ベクレル以下の新基準を満たすため、自主検査も含め安全・安心を担保したい」と熱く語る。次は水田の除染に取り掛かる。

・希望詰まった「桃の涙」発売 JA新ふくしま

 【新ふくしま】JA新ふくしまは4日、農家が丹精して育てた果物王国福島を代表する桃を使ったピーチリキュール「桃の涙」を発売した。

 昨年は東京電力福島第1原子力発電所の事故で県産の桃は「風評被害」に苦しんだ。「桃の涙」は、JAと大和川酒造店、福島県酒類卸(株)、サガデザインシーズの4者による共同開発で生まれた。

 福島の復興と、また「加工することで福島の桃を一年中味わってほしい」という6次化への思いを乗せ、発売した。

 「桃の涙」というネーミングには、震災の被害を受けた生産者のたくさんの悔し涙、それを応援しようという涙、その応援に感謝する涙などが詰まっている。また、悲しみから新たな一歩を踏み出そうという前向きな思いも込めた。

 県酒類卸の高橋則夫社長は「一県一県へ、このたくさんの思いを伝えたい。復興への思いを込めて飲んでほしい」と意気込む。

 「桃の涙」は農産物直売所「ここら」の他、全国の酒店で販売する。問い合わせはJA直販課、(電)024(553)3657。

・放棄地で小菊栽培 川俣町の大内さん 妻と再生へ着々

 【ふくしま】計画的避難区域に指定された川俣町山木屋で和牛の繁殖や稲、アスパラガス、小菊などを栽培していた大内孝雄さん(60)は営農をできずにいたが、国の耕作放棄地再生利用緊急対策(被災者支援実証ほ場)を活用し、同町秋山で小菊栽培による営農を再開した。

 大内さんが借り受けたのはパイプハウス(7.2メートル×36メートル)2棟と露地30アールなど。現在、ハウスで小菊の育苗を始めたところだ。労働力は妻のまり子さん(56)と2人。「小菊栽培はまだ2年目なので秀品率を高める技術を習得したい。ハウスでの小菊育苗の後にヒマワリもやってみたい」と抱負を話す。また、「圃場(ほじょう)は桑畑の跡地で20年近く放棄されていたので、土づくりに一番苦労した」と語る。

 小菊の苗は4月下旬〜5月上旬に露地の圃場に定植し、8月の盆と9月の彼岸向けを狙う。出荷はJA新ふくしまに行う。

 同緊急対策は大震災による被災農家が避難先で耕作放棄地を再生し営農再開を支援する。