福島 直売所 新鮮野菜足りない/県外の仲間が直送 被災地の食支える

掲載日:
2011/04/03
発行元:
日本農業新聞

 東日本大震災から3週間が過ぎ、交通網の復旧に伴い被災地の農産物直売所にも支援の輪が広がりつつある。交通が遮断された非常時でも食料供給の最後の砦(とりで)の機能を果たす直売所。だが、福島県内の店舗は、原発事故問題で地場産野菜を扱えず、「地産地消」ができない状態が続く。危機に直面する同県内直売所に向け、提携する店舗から青果物や加工品が送り込まれ始めた。

 3月30日、福島県JA伊達みらいのファーマーズマーケット(FM)「んめ〜べ」入り口に最も近い売り台に、「JA千葉みらい 福島応援コーナー」が設置され、ホウレンソウ、小松菜、キャベツなど10種類の野菜が並んだ。前日に同JAのFM「しょいか〜ご」の田中美佐男千葉店長と高浦浩一習志野店長がワゴンに満載し、持ち込んだ。

 「地場の物が売れない危機的な状況なので、微力ながらお役に立てればと」と田中店長。復旧した東北道沿いのJAすかがわ岩瀬のFM「はたけんぼ」にも運び込んだ。

 「本当にありがたいことです」と「んめ〜べ」の高橋弘店長は感謝する。地産地消を最大の売りにするのに、肝心の地場産が扱えない。減る客足に打つ手がないいら立ちが募っていたからだ。

 同店の地震自体の被害は軽微で、休業は1日だけ。翌日から停電なので駐車場で青空販売し、大勢の客でにぎわった。だが、21日に暗転。暫定規制値を超える放射性物質の検出で約50品目の野菜類が出荷を制限された。

 売り台から主要な地場産が姿を消し、市場仕入れ品が並ぶ。市場仕入れを増やすと直売所の個性が薄れるが、品ぞろえしなくては客足は遠のく。通常2割程度の市場仕入れは全体で6割にも達し、青果物になるとさらに高い。「何屋になったか分からない」と菊池洋介店長補佐も悔しさをにじませる。「せめて牛乳ぐらいは」と、すがる思いで連絡した長野県のJA上伊那の「あじ〜な」が快く「農協牛乳」を送り込んでくれた。

 支援の輪は各地に広がってきた。店舗間で農産物のやりとりを行っていたファーマーズマーケット戦略研究会の会員店舗からも送り込める商品リストが届き始めた。宅配便を使った取引だ。「戦略研究会では復興イベントも呼び掛けていますが、これを前倒ししていただけないか。品物をまとめて送り込んでいただくと、売り場を作りやすく、経費も安上がりになります」と高橋店長は要望する。