排水、がれき撤去早く/宮城県石巻市/農地の浸水今も

掲載日:
2011/04/07
発行元:
日本農業新聞

 東日本大震災による津波で、宮城県は全農地の11%に当たる1万5002ヘクタール(農水省調べ)が被害を受けた。発生から3週間以上たつが、田畑の浸水は続き、流れ込んだ土砂やがれきの撤去も進まない。水稲の育苗作業が迫る中、営農再開への大きな障害となっており、一刻も早い排水や撤去を生産現場は望む。(震災取材班)

 「あの辺りは全て田んぼだったんだが・・・・・・」。宮城県石巻市の大川地区。JAいしのまき営農販売部の酒井 秀悦部長が指さした方向は、一面が水没して沼と化していた。大量の土砂の中には流木や家の残骸、車などが埋まっている。大津波は海岸から5キロ以上離れた同地区にも、北上川を逆流して押し寄せた。

 県東部に位置する石巻市では、全体の21%に当たる2107ヘクタールの農地が流失・浸水した。県内で3番目に被害面積が大きい。農水省などのポンプで被害田から排水を続けるが、地震による地盤沈下や大潮の影響もあり、大川地区をはじめ3週間以上も海水が引かない地域は多い。

 JAは、津波の被害を受けた水田でもがれきの流入がなければ、除塩対策をした上で水稲の作付けをできる限り進める考えだ。しかし浸水が長引けば土中の塩分が増し、作付けが難しくなる。このためJAは排水作業の強化や、代かきによる除塩のため農業用水への早期通水を求める。

 津波で運ばれた土砂やがれきなども、道路を通行できるように最低限が取り除かれただけだ。農地では撤去がほとんど進まず、農家の不満が高まっている。JAが調べたところ、市内の水田には多い所で土砂が2メートル以上堆積し、その上にへどろが50〜60センチ、さらにその上にがれきが積み上がるといった状況で、農家やJAによる撤去も困難だ。

 JAは、こうした水田での今年の作付けは見送る方針。だが放置が続けば油や有害物質などが土中に浸漬し、長期的にも支障が出かねない。

 県内の沿岸部の農地は多くが同様の状況で、排水や撤去が遅れれば、営農の早期再開を目指す農家の意欲をそぐ恐れもある。農地や自宅に津波が流れ込んだ仙台市若林区の50代の農家は「土砂やがれきが多過ぎて、何から手を付ければいいか分からない。遺体があるかもしれず、農業どころではない」と漏らす。

 こうした声を受けて県は2日、海水が浸水した農地の排水作業や塩害・油害対策への国の全面的な支援などを鹿野道彦農相に要請した。震災から間もなく1カ月。生産現場は「一刻も早くやらなければ、将来の美田も確保できなくなる」(JAいしのまきの酒井部長)と、国の早急な対応を求める。