[農に架ける]特別編第3回 JA仙台代表理事組合長 高野秀策氏

掲載日:
2011/06/08
発行元:
日本農業新聞

・水田含めた法人化を支援 まず排水施設の復旧

 東日本大震災でJA仙台では七ヶ浜支店が津波で全壊した。組合員・准組合員の死者・行方不明者は200人を超し、家屋の流出・全壊は判明しているだけでも953戸(5月16日現在)、農地の被害は約2000ヘクタールに達する。

 「4カ所の排水施設が全て破壊された。除塩も大事だが、まずは排水施設を直さないと何もできない。再度の圃場(ほじょう)整備もありうるだろう。転作麦、大豆が中心の集落営農はあったが、今後は農地の復旧を機に、稲作も含めた本格的な集落営農や法人化を目指していきたい」と高野秀策組合長。

 1、2年での復興は難しく、長期的な対策が必要なため、JA仙台では5月1日付で震災復興・総合企画部を立ち上げた。また、仙台市、仙台東土地改良区と一緒に仙台東部地区農業災害復興連絡会を立ち上げ、復興策を検討している。

 「組合員から、まずは生活資金を稼ぎたい、雇用を何とかしてくれないか――という声が多い。『自分たちの土地を自分たちで復興』ということで、がれき撤去に農家を雇用してもらえるよう仙台市に要請した。復興連絡会でも提案している。問題は農地の復旧に何年かかるかだ。水田専業の人たちはそれまで後継者が待てるのかということ。整備は進めるが、その間どうするのか? 明確な方針があればいいが、国の方からさっぱり出てきていない。早く手を打たなければますます後手後手になる」

 「幸い、実行組合の人たちなどが営農を継続したいと言っているのが救い。JAはやる気のある組合員を支援していく。福島原発の放射能の問題もあり、不安を数え上げたらきりがないが、農業を続けたいという人をしっかり応援していきたい」と気を引き締める。