[拝見直売所](4)母ちゃんハウスだぁすこ 岩手・花巻市/手作り菓子びっしり

掲載日:
2012/01/13
発行元:
日本農業新聞

 岩手県のJAいわて花巻が運営する、農産物直売所「母ちゃんハウスだぁすこ」の売れ筋は農産物加工品だ。年間売り上げは6500万円にもなる。その中心は会員手作りの菓子類で、農業生産が少ない冬の、貴重な収入となっている。

・伝統の味中心に

 菓子を販売する台は広く、6畳分(9.7平方メートル)もある。毎朝、団子や大福などの他、クッキーやケーキなど洋菓子、きりせんしょ、がんづきなど地元伝統の菓子がびっしりと並ぶ。同じ菓子でも、作る会員によって味付けや形はさまざまで、種類が非常に多い。会員が大量に持ち込んでも、午後にはほぼ売り切れてしまうほどの人気だ。「それぞれの味に客が付き、会員を指定して買う人もいる。会員の生きがいづくりにもなっている」と伊藤真人店長は力を込める。

・全国37店と提携

 同直売所はJA直営としては全国の先駆けで、1997年の開設以来、売り上げを伸ばしてきた。年間最低売り上げなどといった会員資格の制限はなく、出荷する農産物や加工品に規格や価格帯なども設けていない。会員が出荷するのは、市場出荷できなかった規格外品で、スーパーに並ぶ規格品より価格が安い。

 ただ、地元の物だけだと、冬に種類が少なくなるため、全国37カ所の直売所などと提携し、和歌山県のかんきつ類や高知県の野菜といった品ぞろえを確保する。地元住民は直売所で青果を買い、スーパーで肉や魚を買うという流れができあがっている。

 東日本大震災では、同直売所に米などを求める客が長い列をつくったが、一人当たりの購入量に制限をかけ、全ての客に行きわたるようにした。大きな被害を受けた三陸沿岸には食材を送った。こうした「協同組合の精神」による取り組みが、地域住民の同直売所への愛着を育てることにつながっている。

 今後は、会員と客とのコミュニケーションをさらに増やすことを目指す。会員の中にある、野菜や果物などの部会がそれぞれ、地域住民を巻き込んだイベントを模索している。 岩手の直売所概況

・冬場商品確保に力

 県内の全産直施設の売り上げは、2009年度で106億6000万円。04年は92億円で、年々増加傾向にある。JAやJA関連会社が運営し、産直の売上高が3億円を超える大型施設がベスト3で、これに道の駅や法人経営が続く。全般に、冬場の商品確保に力を入れ、他県JAと連携したり、ハウスでの野菜栽培を会員に呼び掛けたりしている。東日本大震災では、被災地に食材を送ったり、販売スペースを被災農家に貸すなど支援が見られた。

●メモ● 売り場面積は558平方メートル。1日の来客数は、週末は1300〜1600人、平日は900〜1100人。平均客単価は1638円。登録者は344人。客は、平日の8割、週末の6割が地元住民。観光客は、遠方からバスで訪れる他、盛岡市や北上市から車で来る人も多い。