被災店舗の復旧着々 本格化へはなお課題/岩手・JAいわて花巻

掲載日:
2011/09/10
発行元:
日本農業新聞

 東日本大震災から半年がたち、店舗や施設が被災したJAでは復旧へ向けた歩みが進んでいる。津波で2支店が全壊し、1支店が使えなくなった岩手県JAいわて花巻。代替店舗での営業は本格化しつつあるが、市町の復興計画が策定されていないため、建て直しなどの計画は立っていない。今後の本格的な復旧に向けたハードルは多い。

 JAでは沿岸2支店で職員6人が死亡、1人が行方不明となった。JAは、営農関連や支店施設の被害を7億円(5月末現在)と見込む。

 店舗が流された大槌支店では6月から近くの営農センターの会議室を改装して、通常業務を再開した。組合員の要望に応え、敷地内の施設を直売所として提供し、農家へ貢献している。

 一方、まだ通常業務再開まで至っていないのが鵜住居(うのずまい)支店。6月に4キロほど離れた場所に約25平方メートルのプレハブを建て、臨時店舗として再開した。早ければ今月中旬にも渉外担当者が入り、現状の倍となる10人体制となる。

 ただ金庫がなく、現金の出し入れが翌日対応となる取次業務の状態。釜石市は被災店舗を集め、長屋のように同じ建物に複数の店舗が入る施設を計画する。JAは単独施設でないと取次業務の解消は難しく、独立した施設が使えないか市と協議中。中前隆支店長は「復旧は一歩ずつ進んでいる。組合員のためにも、取次業務を解消したい」と、協議に期待をかける。

 釜石支店では、3月末から旧甲子支店で営業再開。当初は共済関係の問い合わせが多く、来店者の2、3時間待ちも。一段落し、8月からは渉外担当者が組合員宅に出向く体制が整ってきた。

 自らも仮設住宅に住む同支店の植田欣哉支店長代理は「相談事もつらい話が多い。休みもなくやってきて職員の負担が気掛かり」と気遣う。JA遠野統括支店の川野政光支店長は「臨時店舗の立ち上げを優先してきたが、今後仮ではなく正式な店舗の再開を目指したい」と意欲を語る。

・各県JA ほとんどが営業再開

 地震や津波の被害で営業停止に陥ったJAの本店・支店(9日現在、原発事故で営業再開不可能な店舗は除く)のほとんどが営業再開したことが、日本農業新聞の調査で分かった。他の場所に仮店舗を設置したり、別の支店に機能移転したりして営業を再開。ただ、元の場所での営業は依然難しい。原発事故で避難を余儀なくされたJAは、再開のめどすら立たない状況だ。

 岩手県のJAおおふなとは、震災当時、12本・支店が津波よる被災で使用不能となっていた。震災直後からJA職員が懸命の復旧作業に当たった結果、全店(集約・移転した仮設店舗を含む)で営業を再開している。

 本店と2支店が津波で壊滅した宮城県のJA南三陸は、震災直後に比較的被害が少なかった支店に本店機能を移転。壊滅した2支店は近隣の避難所などに仮設店舗を設置、営業を再開した。

 宮城県のJAみやぎ亘理は2支店が津波で流された。1支店は営業再開したが、もう1支店は閉鎖中。共済の受け付けなどを他支店で対応する。

 原発事故による立ち入り禁止区域(警戒区域)に全店が入り、営業困難となった福島県のJAふたばは、本店機能を福島市にあるJA福島ビルに移転。組合員の避難所の最寄りJA9カ所に「組合員サポートセンター」を設けて対応に当たっている。福島県のJAそうまは、原発事故の影響で新たに飯舘村の1支店が営業困難となり、計3支店が他の支店の仮設店舗で営業する。