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共済・保険・社会保障・社会福祉

農山漁村地域における生活の安定に資するべく、共済を中心とした保障提供と、介護・福祉・子育て等の社会保障について調査・研究を行っています。

阪神淡路大震災における支払共済金と波及効果の異時点間分析-メッシュデータを用いた視覚化と一次接近-

発表者 渡辺 靖仁
発表誌 共済総合研究 第53号

概要

目次
  1. 課題
  2. データ
  3. メッシュデータによる共済金支払い効果の視覚化-素朴なアプローチ
  4. 支払率の樹形図分析
  5. 支払率の予測モデル
  6. 評価と考察
  7. おわりに

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1.課題

本稿では、阪神淡路大震災における農協共済の建更の共済金支払が、震災復興にどのような効果をもたらしたかを、利用可能なデータを用いて視覚的・計量的に把握しようとした。

2.手法

本稿で用いたデータは、平成7年を挟む3年次の国勢調査による人口の推移、商業統計による店舗数などの推移と、阪神淡路大震災における兵庫県の建更共済金支払実績の個表データである。これらのデータを、被災状況と支払い状況を500メートルメッシュデータで集約し、視覚的に把握した。次に、被災からの復興状況を、利用可能なデータを用いて計測し、これに共済金支払い状況が及ぼす影響の有無について、回帰分析モデル・樹形図モデル・ニューラルネットワークモデル(NNモデル)の3つを用いて計量的に把握した。

3.結果と評価

  • 視覚化
    被災状況と共済金支払状況の3年次の推移を百分比ではじき、その値の高低で500メートルメッシュを色分けした。この加工により、総人口や商業店舗数・販売額・共済金支払い状況の支払率の高さなどの3年次間の推移を視覚的に把握できるようになった。
  • 計量分析
    あくまで仮説発見という前提に立って、メッシュ単位の相関分析と樹形図展開による効果の把握を行った。共済金支払率と総人口の相関については、きわめて低い値であるが、プラスの効果が統計的に有意に認められた。商業統計の店舗数などでは関連は認められない。震災後の商業地域集約の結果などが影響している可能性もあり、この分析だけでは何もいえない。樹形図による展開では、総人口の推移の値で明確な違いが得られた。共済金支払率の高い地域ほど震災で総人口は減少した。そして、震災後には、共済金支払率の高い地域ほど総人口は増加した。総人口を復元の評価指標として扱うことが許されるならば、一定の成果を得たといってよいであろう。また、マーケティングの観点から見ても興味深い数値が得られた。震災の被害が総人口で見て相対的に少ないと考えられる地域では、メッシュ単位で共済契約件数が33件あるかどうかで共済金の支払率が異なる。33件以上の場合には、共済金は高い率で支払われ、総人口の回復も相対的に大きい。地域別では、この傾向をよりクリアにできるケースも見出された。さらに、パターン認識に特長をもつNNモデルを用いて共済金支払率の予測を可能とした。所与のデータの範囲での検証であるものの、その予測精度は9割を超えている。以上の分析につき、利用可能なデータに対する一次接近としての価値は高いと考える。

4.今後の課題

本稿で用いたデータの制約はきわめて多い。さらに、分析手法もシンプルなものであり、仮説発見のための一次接近としては有効であると考えられるものの、より厳密な検証を施す必要がある。今後はこれらの点についてより詳細な検討を加える。