農山漁村地域の再生・活性化に向けた若年層の地方人材還流戦略
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29信州エクスターンシップの航跡6.経験学習の原理モデル(1)「経験する自己」と「記憶する自己」これらの自己効力感と感情の変化があるにもかかわらず、経験から学ぶことはなかなか難しいことです。これを「経験する自己」と「記憶する自己」の2つの側面から考えてみましょう。われわれは、その瞬間、その瞬間を各状況の中で経験しています。「経験する自己」の経験に応じて何らかの感情のラベルが貼られているわけです。それに対して、しばらく経ったあとに「記憶する自己」が出てきます。「経験する自己」には膨大な記憶があるわけですが、そのシチュエーションの中に強みの原石があったり、非常に創造的になる瞬間があったりする結果、「記憶する自己」にまとまっていきます(次頁図10)。このプロセスを初めて明らかにしたのが、行動経済学をつくった心理学者で、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンです(*8)。(*8)ダニエル・カーネマン、村井章子訳(2012)『ファスト&スロー:あなたの意思はどのように決まるか?』(下巻)早川書房。原著はDaniel Kahneman. Thinking, fast and slow, Farrar, Straus and Giroux , Nov 9, 2011.(2)ピーク・エンドの法則彼はピーク・エンドの法則を唱えました。経験するさまざまなシーンの中で、「ピークの感情をもたらしてくれたもの」と「終わりの感情」の2つで「記憶する自己」が構成されている、という法則です。すると、「経験する自己」でさまざまなものを得たのに、「記憶する自己」に使われないそのほかの膨大な情報はほとんど落ちる。たまにエピソード的にポンと思い出すようにしかなりません。その落ちた情報の中に、創造性のプロセスの重要なポイントや、強みの原石になり得るものが膨大に含まれ

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