農山漁村地域の再生・活性化に向けた若年層の地方人材還流戦略
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138のだが、お互いに関心を示すことはない。それが自然な振る舞いなのである。現代の都市空間において、もし彼らを繋ぎとめるものがあるとするならば、そこにはカネと契約書以外に何があろうか。それぞれの組織・団体は、社会というものから一定の距離を置き、自らその窓を閉ざしている。都市生活者が互いに無関心を装うのは精神的・社会的安寧のための保護行動であって、無関心であるがゆえに「人間は自由である」とした――都市社会学の父ともいえる――G.ジンメルの考察(*7)には、もちろん賛同している。しかしながら、この現実を無批判に受け入れてしまって、その先に日本の未来はあるのだろうか。そのことに現代学生たちは気づき始めているのではないだろうか。これから彼らが踏み出す地平には、生き方への問い、暮らし方への問い、そして働き方への問いがちりばめられているが、それを丁寧に拾い上げて自分なりの回答を見つけ出していくこと、それがエクスターンシップの目的であるといっても、まんざら誤りではないだろう。(*5)アーヴィング・ゴッフマン著、浅野敏夫訳(2012)『儀礼としての相互行為:対面行動の社会学 新訳版』法政大学出版局(*6)エドワード・ホール著、日高敏隆・佐藤信行訳(1970)『かくれた次元』みすず書房(*7)ゲオルク・ジンメル著、居安正訳(2016)『社会学:社会化の諸形式についての研究 新装復刊』(上・下)白水社6.エクスターンシップの新たな可能性2017年の夏、「信州エクスターンシップ2017」に先立って、8月1日から7日にかけて富山県魚津市が主催する農商工連携インターンシップ事業「魚津エクスターンシップ2017」が開催された。この企画は、プログラム内容に伝統的な祭りへの参加や地域住民とのコミュニケーショ

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