農山漁村地域の再生・活性化に向けた若年層の地方人材還流戦略
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135性ある対策の探究と、そしてなによりも、新たな人材還流の仕組みをつくりだすことである。農山漁村地域に永続的な生活基盤を再生するためには次代を担う人材が必要であり、「都市から地方への若年層人材還流」というキーワードが、ひとつのソリューションになり得る理由がここにある。(*2)玉野井芳郎「まちづくりの思想としての地域主義」『全国まちづくり集覧:ジュリスト増刊総合特集9』1977.12.42―47ページ4.エクスターンシップというアクションリサーチ次代を担っていくのは誰でもない、現代の若者たちである。しかしその若者たちは都市部に集中している。高度成長期以降にはじまった「人口集中による都市の過密化」と「人口流出による農山漁村の過疎化」という現象は日本の産業構造の変化と足並みをそろえるように定着し、その背景には、1970年代中頃にヒットした太田裕美さんの『木綿のハンカチーフ』の歌詞に象徴されるような職業選択の変化と、なによりも生活スタイルのパラダイム・チェンジがあった。現代の若者たちの多くが、この1970年前後に出生した人々の子どもたちであるとするならば、これまで彼らに向けられてきた周囲の期待もおのずと想像がつく。したがって、彼らのアイデンティティもまた、都市生活を基準に形成されてきたと考えるのが自然であろう。人口密集地であり、産業と情報そして娯楽施設の集積地でもある大都市圏で生まれ育った若者たちが、もし地方とりわけ農山漁村地域での就業すなわち生活を選択するとしたら、その動機は何なのか、それを探求することが研究の主題となる。

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