農山漁村地域の再生・活性化に向けた若年層の地方人材還流戦略
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134地域の特性に応じて作り上げていくことが必要」という、すなわち「まちづくりの思想」が語られている。これらを総括すると、そこに浮びあがってくるのは「生き方」と「暮らし方」、そして「働き方」の変革ではないだろうか。生活の場の再構築という観点から眺めれば、高齢化と人口減少を背景に新たな地域主義の時代が到来したといってもいいのかもしれない。フィールドワークで全国行脚を続けていると現代日本の地域格差が想像を超えて拡大していることが見えてくる。厚生労働省が「人口が横ばいで75歳以上人口が急増する大都市部、75歳以上人口の増加は緩やかだが人口は減少する町村部等、高齢化の進展状況には大きな地域差が生じています」と指摘したとおり、都市部と農山漁村地域では抱える社会的課題も明らかに異なっている。すなわち現代日本は双子のリスクを抱えているのである。圧倒的多数の高齢者を抱え福祉分野でマンパワー不足に陥る都市部と、人口減少が加速して生活基盤が崩壊していく農山漁村といった構図である。したがって、地域主義を提唱した玉野井芳郎氏の言葉を借りるならば「地域住民が、その地域の風土的個性を背景に、その地域の共同体にたいして一体感をもち、地域の行政的・経済的自立性と文化的独立性を追求」し、「住民の自発性と実行力によって地域の個性を生かしきる産業と文化を内発的につくりあげて、「下から上へ」の方向を打ち出して」いかなければならない(*2)。このような状況下にあって、わたしたちの視線の先には不可逆的な人口減少に陥って高齢化の進行した農山漁村地域がある。したがって第一義的な課題は、人口の社会減を抑制するための実効

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