縮小しながら発展する地域の創生
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94ところが、「富」という漢字を見てみましょう。「富」は上が家の屋根です。中に口や田がありますが、それは酒瓶のことです。つまり、屋根の下でお酒を発酵させているという意味です。「良いお酒をたくさん醸している家は富がある」という中国の概念です。屋根の下で発酵させるというのは自然過程で、微生物がやっています。農業の原型です。発酵菌が農業をしているわけです。発酵菌が農業をしていて、そこから出てくるものがお酒です。米を通過してお酒までいきます。お酒までいくと、当時は最高の換金製品ですから、すぐお金に換えられます。つまり、「富」という字の中には、1次産業の大元になっている発酵菌から貨幣まで全部が入っています。それが大きい屋根に守られているというのが、「富」という概念です。これに対して資本主義は、貝です。貝とは死んだ貝のことです。生命活動が終わった貝殻だけを取り出して貨幣にします。それは自分でたくさん保持することができますし、金に換えたりすればすごく利用しやすいものになって、貨幣主義が発達するわけです。この貨幣を元にした資本主義と、1次産業からお金にすぐ交換可能なお酒まで至るものを屋根、つまり「郡是」という屋根の下で行う産業というのは、大きな違いがあります。ですから、僕は資本主義に対抗するものとして、富本主義というのがあるのだと思います。富本主義の「富」というのは、先ほどから話題になっている6次産業の考え方のバリエーションだと思います。お酒づくりはまさに6次産業なのです。田んぼでお米をつくって、それを発酵菌の働きによって分解してもらって、最終的にお酒という高度な価値物に転換していく。それが「富」だという考えを念頭に置いてみる

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