縮小しながら発展する地域の創生
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926.「国是」より「郡ぐん是ぜ」に(1)コミュニティを良しとする発想=「郡是」中沢:また、コミュニティの問題についてですが、僕はこの間、京都府の綾部市というところから呼ばれてお話をしに行きました。綾部市は、いわゆる大本教(*9)が発生したところです。同時に、ここにはグンゼという有名なアパレルメーカーがあります。元々は繊維製品の大きい工場が発生したところで、グンゼの工場は日本の資本主義の中でも特筆すべきシステムです。かなり古い時期から、労働者をいわゆる賃金労働者として扱わないのです。女工の教育をはじめ、職工の福利厚生すべてを含め、綾部という町を一つの繊維産業を中心にした総合的・複合的な都市をつくろうとしたところなのです。そこで講演をしてきました。そのとき僕は次のようなことを考えました。グンゼはストッキングの名前だと思っている方がいらっしゃるかもしれませんが、これは「郡是」という漢字なのです。「○○郡」の「郡」と「是非」の「是」を合わせた「郡是」という言葉で、創業者が自分の思想を名前に盛り込んだのです。つまり、「国是」ではないということです。当時は国是、あるいは私是、エゴの是だけで動いていく。この二つに両極端に分かれていたときに、「郡是」ということを言い出したわけです。つまり、コミュニティを良しとすることを第一方針としていくというシステムをつくったわけです。そのための一つのモデルケースとして、「郡是」の工場をつくりました。これは、イギリスのロバート・オウエン((*(*という、社会主義の原型をつくったような人の工場をモデルにして、周辺部の農村と、農村部から供給されてくる労働力、この労働力として工場に集まってきた女工

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