縮小しながら発展する地域の創生
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73たが、その言葉だって、鎌倉の武士たちがワーッと登場してきて、そのときに初めて言語化され、可視化されたのです。それまでは日本人の中に「一所懸命」という考え方はありませんでした。「一所懸命」というのは、要するに「一つの場所で命をかけ、一つの主の下に命をかける」ということですが、以前はそのような考え方がなかったのです。ただ、時代の大きな流れの中で、封建制に向かっていったとき、そうしたものが蓄積されていきました。ですから、みんなにはそれが見えないのです。ところが、ある日突然、可視化されて現れる。そうすると、変化が急速に波及してくるという現象が起こるのだと思います。今の資本主義のシステム自体はいろいろ問題を抱えていて、それをどちらの方向に変えていくのか、まだよくわからないのです。ただ、今まで「よし」とされ、前提とされていたことが、もう前提にはならないだろうということだけは間違いないと思います。川井:それは、先ほど触れた東日本大震災を機に大きく変わり始めた動きは、「世代間の中での食い違いを貫くもの」「その世代に関係しないもの」ととらえてよいわけですね。中沢:はい。たとえば西村先生よりずっと保守的な若者は大勢いますから、世代は関係ないと思います。ただ、世界全体が大きく動いていることは間違いありません。今は、それをいち早く言語化して目に見える形にできるかどうかという「臨界点」に本当にきています。これはまだ誰も成功していません。川井:今、お名前が出ましたが、西村先生は今の資本主義の動きに、ある程度の矯正・修正をしていかなければいけないというお話だったかと思います。経済学者としての西村先生から見て、今の現実、産業・経済のあり方はどうでしょ

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