縮小しながら発展する地域の創生
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65で、それをまとめようとするのが総合政策学部のビジョンでした。医療の問題や、経済システムをどの方向に変えていかなければいけないのかという問題も、20年前には萌芽のような状態でした。さらに、今日の話を聞いていると、もう一つの大きい物語というか、システムをつくり始めています。これを、さまざまな表面で起こっている変化の揺り戻しとか、反対方向に動くとかということだけで捉えていると、日本の社会の深い部分で起こっている変化をつかめないという印象を受けました。確かに5年前と比べて、ある人々は着実に変わってしまっています。それをキャッチしていくことが大切です。その人たちの考え方の変化している方向は、おそらく今後10年、15年、20年と、日本の社会を徐々に変えていく方向に向かっていく主流となるものだと思いますので、私はそんなに悲観していません。(*1) 中沢新一(2011)『日本の大転換』集英社(集英社新書)川井:ありがとうございます。中沢先生とは常々、日本のこれからについてお話もしていますが、具体的にご意見を聞いたのは初めてですので、私にとっては少し励まされる思いになりました。ただ、正直に言いまして、私も地域に入ってさまざまな人たちの声を聞き、全体としてそうした雰囲気を感じる一方で、まだ何か大きな圧力のようなもの、動きを封じ込めているような強い圧力のようなものを、皆さんが感じながら生きているような雰囲気も感じられるときがあります。その点について、中沢先生はどのようにお考えでしょうか。中沢:それは僕が自分の人生でずっと感じ続けていることです。どの共同体、どの社会に行っても、その圧力は常に働いています。ただ日本

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