縮小しながら発展する地域の創生
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42最近、これに近いことを、藻谷浩介さんが「お金にとらわれない成長をつくる」という表現でおっしゃっています。つまり、「『成長しなければ』と言って何かをやるのではなく、やりたいことをやって、その結果、成長するということはどういうことかをもうちょっと詳細に検討しよう」という意味で、大変印象的な表現だと私は思います。特に藻谷さんは、都市と地方の関係をどうやって滑らかなものにしていくかという問題意識を持っておられて、さまざまなご提案をしておられます。(3)「定常の中の豊かさ」を考えるでは、「結果としての成長」とはいったい何なのか。それについて以前、広井先生と議論したことを紹介します。最近、CDはあまり売れていませんが、かつてはかなり売れている時代がありました。当然、CDがたくさん売れるとGDPは増えます。これについて広井先生は、「1枚の新しいCDが増えて別のCDが消えるということはまさに定常的なのであって、定常的ということは、毎日同じことをするということではないのだ」とおっしゃいました。これは、けだし名言です。私たちは何も考えないで、ずっと同じことをいろいろ工夫しながらやる。あらゆるセクターでそういう努力しているわけですから、広井先生のお話は大変大事です。しかし最近、『経済学私小説:〈定常〉の中の豊かさ(*1)』という本を書かれた一橋大学の齊藤誠先生が、かなり違う方向を目指すようになりました。広井先生はCD販売の事例をあげて、「成長しなくても、毎年売れる曲が違う曲になっている」という話をされていましたが、彼は「ランニングマシンだ」と言っています。

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