縮小しながら発展する地域の創生
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32古くは渋沢栄一の『論語と算盤』や、近江商人の「三方よし」といった伝統があったわけで、それらの考え方を現代にどのように生かしていくかという問題になります。地域内経済循環に触れると、イギリスのNew Economics Foundationが「地域内乗数効果」という、できるだけヒト・モノ・カネが地域で循環するような経済のあり方を目指す概念を提唱しました。類似例を挙げると、日本の長野県飯田市でも、若者が故郷に帰ってこられる産業づくりに取り組み、経済自立度70%を目標に掲げています。地域内循環を表す一つの指標と言っていいでしょう。コミュニティ経済の例として、コミュニティ商店街、農業と結びついたコミュニティ経済、自然エネルギーと結びついたコミュニティ経済、伝統・地場産業や職人的な仕事と結びついたコミュニティ経済、福祉・ケア関連のコミュニティ経済など、さまざまな形態が考えられます。香川県高松市の丸亀町商店街は成功事例と言えるでしょう。(4)自然エネルギーと「永続地帯」千葉大学の同僚・倉阪秀史さんは「永続地帯」の研究をしています。エネルギーの自給率を地域ごとに見ていくのです。日本全体ではエネルギー自給率が4%程度に過ぎませんが、都道府県別に見ると10%を超えているところが14県もあります。ベスト5は大分、秋田、富山、長野、鹿児島です。大分は26・9%とかなり高い自給率になっています。大分県の自給率が高い理由は、別府温泉など温泉が多く、地熱発電が大きなウエイトを占めるからです。富山、長野などは、山がちな風土を背景に小水力発電が大きい。このように、日

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