縮小しながら発展する地域の創生
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24(6)人口減少社会への基本的視点1975年、私が中学2年生くらいの時、歌手・太田裕美さんの『木綿のハンカチーフ』という歌がありました。都会に出て行った男性と地方に残った女性との掛け合いのような歌です。最後は、大都会の暮らしが楽しくて帰れない男性に、女性が「涙拭くハンカチーフください」という歌詞になっています。この歌はまさに人口増減の図で線が直立するほど人口が急増した時代を象徴する歌です。つまり、人口急増の時代は、すべてが東京に向かって流れていた時代です。ただしその後に、人口減少期に入ります。重要なのは、人口減少社会への基本的視点です。これまでの人口増加期、あるいは高度成長期の延長線上には、今後の物事は進まないでしょう。むしろこれまでと逆の流れや志向が生じると考える方が合理的で自然ではないかと思います。(7)若い世代の「ローカル志向」その一つが、若い世代のローカル志向です。ローカル、地元、地域などへの関心を非常に強めており、「農村・地方都市から東京などの大都市へ」とは異なる流れがあります。それは「時間軸の優位から空間軸の優位へ」と言い換えられます。拡大期はすべてが一つの方向に流れるため、時間軸が優位になり、時間軸の中である地域は進み、ある地域は遅れていると、一直線上に位置づけられます。しかし、定常期や人口減少期になると、世の中が一つの方向に進むということ自体が後退していき、むしろ空間軸が前面に出るようになります。それぞれの地域の持つ固有の価値や風土的・文化的多様性などに、人々の関心が向かうのです。ゼミの学生を見ていても、若い世代のローカル志向を強く感じます。例えば、地方出身の

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