縮小しながら発展する地域の創生
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114然共生を重んじ、「太陽」と「水」と「大地」が人間にとっての富の源泉と考える大本教のコスモロジー。ここには明らかに「シェア」の概念が存在し、相互扶助経済のようなものが機能しているように思える。「閉じて開く」という運動と、そのバランスのとり方も、このようなメンタリティが深く関係しているように思えてならない。さらに、このテーマは「資本」と「富ふ本ほん」の議論にもつながっている。なぜなら自然と人間の協働により形成されるものだけが「富本」になるからである。その意味において、土地は生産の要素ではなく経済以前のものであり、土地にはそこで活動する生物すなわち生命も含まれる。そこにあるものは自然という大きな枠組みのなかで万人にシェアされているのである。したがって資本主義的な利用には適さないのである。この「シェア」の概念は、コミュニティ経済あるいは相互扶助経済を構想するにあたり大切な要素になるものと思える。それはまた、少子高齢人口減少時代に突入する日本の未来の産業構造のあり方を考えるうえにおいても、ますます重要なキー概念となるだろう。人口減少をともなう高齢社会では――たとえ技術革新が進展しようとも――以下の3つの理由により国内マーケットは縮小せざるを得ない。ひとつには、加齢による身体の衰えは人間の行動範囲を縮小する。さらに、収入の多くを年金に依存せざるを得ない状況では財布の紐も堅くなる。そして最後に、人間は誰しも――あくまで一般論としてではあるが――加齢とともにエネルギー摂取量は減りモノへの執着も薄れていくため、日常の消費行動は鈍化する。したがって、これまでの企業戦略やマーケティング理論では解けない課題を産業界は抱えることになり、資本主義的な市場の限界に直面することになる。

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