縮小しながら発展する地域の創生
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113という問題が提起されたことがきっかけである。これが議論を深化させるターニングポイントになった。なるほど「閉じて開く」という観点から眺めれば「家」と「家族」というテーマも興味深い。主に血縁関係者を中心に構成される「家族」という集団が最小単位のコミュニティであるとするならば、「家」はそのコミュニティの象徴であり活動の拠点である。そこは「閉じた場所」であるが、コミュニティの成員たちは「家」があるからこそ開かれている。そして以前は「家」そのものが、物理的・空間的に地域社会に開かれていた。しかし現代においては、「家」と「家族」は地域社会から分断され「閉じる」方向へと進んでいる。さらに社会の高齢化にともない独居の問題も顕在化しはじめている。そこに「私有」という「閉じた資本」が存在するのであり、「縮小しながら発展する未来」を展望する際には、「私有」に関する問題は、避けて通ることのできない重要なテーマになる可能性がある。ただし、「私有」と「公共」に関しては、結論を安易に引き出して拙速な対応を求めるのはとても危険である。したがって、多角的かつ学際的な議論を重ねながら、慎重な取り扱いをすべきであろう。しかし、この論点を入口にすべての問題が結びついていくことになった。「私有」と「公共」もしくは「公有」の間には「シェア」という概念も存在する。中沢新一先生が例に挙げた「綾部市」の事例、それはヒューマニズムとコスモロジーの融合であり、現代資本主義の内部に贈与的なもの――ある種の贈与論――を組み込んだ内発的発展モデルのようにも思える。「国是」ではなく「郡是」を重んじ、「生きる」・「はたらく」・「暮らす」を統合したコミュニティを産業ネットワークによってつくり上げたグンゼ株式会社のヒューマニズム。そして生物多様性と自

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