縮小しながら発展する地域の創生
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112平成27年度JA共済総研セミナーにおける公開研究会は、新たなコミュニティ創りが21世紀の日本の課題であるという視座に立ち、そのようなコミュニティの内部に「縮小しながら発展する未来」の姿を映し出そうとする、かなり冒険的な企画であった。あえて結論は用意せず、まさに「語りえないことは沈黙しなければならない(*1)」ことも覚悟の上で、言語ゲーム(*2)ともいえる筋書きのないドラマが、緊張感を伴いながら展開されることになった。期待に反することなく話題は時とき間を遡り、そのま・な・ざ・し・も、政治や経済のみならず文化や心的な世界にまで向けられ、学問の境界領域を縦横無尽に飛び回るような自由奔放な対話が、壇上で行われた。そのなかに見えてきたのは、まさに「サステナビリティ自然学」ともいえる学際的もしくは超学的な学問の萌芽であった。公開研究会における話題の中心をなし、全体を貫いていたのは「閉じて開く」という抽象概念である。この概念を基軸に、人間の意識の問題から個人と社会の関係、そしてコミュニティと国ひいては世界との関係を、できるかぎり丁寧に描き出し、ディスカッションを通じて整理していこうとしたのである。ディスカッションにおける話題が新たな展開をみせたのは、「家族」というキーワードから「私有」エピローグ一般社団法人 JA共済総合研究所 調査研究部 主席研究員  川井 真

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