縮小しながら発展する地域の創生
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107きた。その名残が高度経済成長です。日本海側から集団就職で「金の卵」と称して、東京へ集めたわけです。太平洋ベルトに集めたわけでしょう。それが先ほどのピークかもしれません。そうした中から、今度は個人をどうするか。あるいはコミュニティをどうするか。「コミュニティ」という英語の単語は難しいのです。日本語で一番合うのは何でしょう。僕は「地域」ではないと思います。「世間」だと思っています。つまり、得体のしれないものなのです。その得体のしれないものが、もし、コミュニティづくりという言葉に置き換えられたらどうなるでしょうか。ちょっと心配です。もう少し具体化したほうがいいのではないかと考えています。その意味で、僕は協同組合法を少し勉強して、現に『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト((*(*』によく目を通しています。その両方の性格をもって協同組合(Genossenschaft)が出てきたという、そこのところに協同組合の強さがある。あるいは地域創生の何かヒントがありそうです。つまり、資本主義社会の営利を追求するような仕組みとともに、相互扶助や「お互いさま」を大事にするゲマインシャフト、その中に血と家と精神のゲマインシャフトがあるといったのがテンニエス((*(*です。その3つを我々はうまく協同組合システムの中に取り入れていったら、少し地域創生の中で役割を果たす潜在能力があるのではないかと私は考えています。それが私の感想でした。川井:ありがとうございます。(*16)原タイトルは“Gemeinschaft und Gesellschaft:Grundbegrie der reinen Soziologie”1887年刊行。日本語訳はフェルディナント・テンニエス著、杉之原寿一訳(1957)『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト:純粋社会学の基本概念』(上・下)岩波書店(岩波文庫)など。(*17)Ferdinand Tönnies(1855~1936)ドイツの社会学者。

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