2025年の日本を俯瞰した調和的な社会経済モデルを探る
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88も明後日と、どんどん所得が増えていく世界を夢見るわけにはいかないのです。調べてみたら、日本で長期間人口が減った時代はないのです。江戸時代は横ばいです。その横ばい状態だった江戸時代はどうだったか。江戸時代はとても文化的なリサイクル社会であり、日本特有の素晴らしい文化も育ちました。 それを「内向き」と言ってしまえばそれまでですが、我々にとって本当に住みよい社会とは、そのように人と人が触れ合い、にっこり笑っている社会です。本当に心豊かな、というのはこのことです。そういう価値観に変えていく必要があると思います。そこへ価値観を変えないと、政治もなかなか大変だと思います。とにかく経済発展しなければならないと言われ続けたら、きついですよ。その意味でも、我々は新しい価値観を持つという座標軸をつくっていく必要がある。これは緊急にとまでは言わないけれども、そこから始めなければいけないと思います。 私はそのスタート地点こそが、地方だと考えています。地方が「そこへ住みたい」という「地域」をつくる。おそらくそれは、ピカピカした経済の社会ではないと思います。そのようなモデルをこれからつくることが時代の先取りであり、日本の未来をつくることだと私は思うのです。地方の力を発揮させるためには、やる気のある人の存在と行政の後押しが必要川井:ありがとうございます。では、エールを送られた地方の立場から、早川先生、一言お願いします。(*19)猪飼周平(2010)有斐閣。著者は一橋大学教授。(*20)地域包括ケア研究会『地域包括ケアシステムを構築するための制度論等に関する調査研究事業報告書』(2014年3月)。厚生労働省ウェブサイトを参照。

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