2025年の日本を俯瞰した調和的な社会経済モデルを探る
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81なことを言うけれども、そもそも介護してくれるマンパワーがあまりない」と言うわけです。しかも開業医も少ないのです。陸前高田市の場合、多くの開業医が亡くなられて、残った開業医が必死にやっているので、在宅医療を担当する医師がそもそもいないのです。ですから、「自分も外来が忙しい。在宅医療をやらなければいけないけれども、手が回らない。どうしたらいいのか」となった。そんなとき、陸前高田市の高田病院の前院長で、石木幹人さんという医師が、「地域にはお年寄りがいる。お年寄りが支え手にまわることこそ日本の未来ではないか」とおっしゃった。また、医師不足を解決するには、もうICTと訪問看護しかないのです。「画像で判断して、訪問看護師にやってもらう」。被災地で必死にやっている一人の開業医の口を突いた言葉でしたが、西村先生のおっしゃる通り、イノベーションはギリギリのところから出てくるのだと、私もそのとき本当にそう思いました。 少子化対策もそうです。都市部のように雇用機会や所得水準がなくても、「その地域が好きで、そこに住み続けたい」という地域をつくったところが生き残るのだと思います。だから私は、「日本の未来は地方にある」という言い方が適切かどうかは分かりませんが、先に苦しんでいるところから未来が拓かれると思っていて、西村先生とまったく同じことを考えています。真野:イノベーションが地方から起きるということで、非常に示唆に富むお話をありがとうございました。川井:今のお話を聞いていて私は、かつてプラグマティズム((*(*の社会心理学者のミード((*(*が、「I(主我)とme(客我)」と表現していたものを思い出しました。彼は二種類の自我、他者の期待をそのまま自己に投影しただけの「me(客

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