2025年の日本を俯瞰した調和的な社会経済モデルを探る
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80苦しさの中から生まれた知恵が「日本の未来」をつくっていく辻:都市の高齢化は日本の大きな課題です。日本の著しい経済発展は、それに対応する急速な人口移動を生み出したのです。ですから今度は、著しい経済発展の拠点がごそっと、大変なことになります。柏の取り組みは、たまたま東大のキャンパスがそこにあったからやっているのであって、西村先生のおっしゃる通り特別な例だと思います。 くしくも今日は3・11ですが、東大の海洋センターが岩手県大槌町にあります。大槌町はいわば東大の盟友です。その大槌町が被災して本当に大変なことになったので、私たちは大槌町やその近隣の釜石市、陸前高田市を応援しています。私も被災地に出たり入ったりしているのですが、実は被災地の未来というのは、まさに日本の未来といっても過言ではないのです。まず病院が流されて病床がなくなった。どうするか。高齢化は進んでいるということで大変苦しんでいます。病床をそれほど確保できません。結局、在宅医療を含めて何も無くなったところから日本の未来をつくろうではないかということで、取り組むことになりました。 以来、現地の方とずっとやり取りしてきましたが、その中で非常に印象的だったことがあります。それは何かというと、私たちは申し訳ないけれども、そうした疲弊した地域できれいごとに近いあり方論を話すわけです。そうすると、あるケアマネジャーさんが来て「辻先生、そん(*12)「東近江地域医療連携ネットワーク研究会」ともいう。「患者よし・機関よし・地域よし」の三方よしを目指して、平成19年度から、毎月1回、圏域内の病院・診療所・介護施設・公共機関などの関係者が一堂に集まり「顔の見える関係づくり」を行っている。(滋賀県ウェブサイト参照)。(*13) Occupational Therapist の略、作業療法士。(*14) Physical Therapist の略、理学療法士。

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