2025年の日本を俯瞰した調和的な社会経済モデルを探る
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78入ってきて進んできましたよね。例えば今後、3次産業のところでハイテクも含めたいろいろなものが入ってきたとします。医療の分野などは典型的ですが、仮にそうなったときに、先ほどの増田寛也先生((*(*の話に少しかぶりますが、都会でいろいろなニーズが発生すると思うのです。特に介護や医療の分野では、あまりよい言い方ではないかもしれませんが、あるサービスに対するニーズが発生したときに、それらが公的保険の範囲内で価格が一緒であれば、地方と比べてわりあい経済的余裕がある都会の消費者は高度な技術を選択してくると考えられます。そうなると、やはり地方と都会に格差が生まれ、地方にいる介護者などはそうした新しい技術の集まる都市部に吸引されはしないでしょうか。つまり、3次産業の部分に少し最先端のものが入ってくると、それを求めて都市部への人の流れが起きるのではないかという懸念というか、感覚を持っていますが、いかがでしょうか。西村:そうはならないと思います。例えば、辻先生が先ほど報告されたような話は、従来の延長線上での展開ではなく、まさに「イノベーション」という表現が相応しい内容だと私は思っています。病院中心の医療から在宅へ、主に家で看ていく医療に転換しつつある新しい動きです。そこでは、本当の人間らしい医療の提供が始まっています。ただ柏モデルは全体の中では特殊な事例であり、これは後で辻先生にも補足していただくとありがたいのですが、私の印象では、都会よりも地方の方がいろいろな取り組みが進んでいるように感じます。東京のようにあまりにもたくさんの医療機関があるところでは、そうした新しい動きが見つかりません。むしろ資源のない地方の方が新しい動きを進めています。 典型的な例でいえば、辻先生が先鞭をつけら

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