2025年の日本を俯瞰した調和的な社会経済モデルを探る
75/128

73ているように見える時間かもしれない。そうした時間を計算しないで、畑へ行って体を動かしている時間だけを測定すると、年間30日くらいかもしれない。ちょっと少な過ぎるかなとも思いますが、ひょっとしたらそれくらいかもしれません。 そうしたら、あとの残りの時間は何をしているか。これは若干想像も入りますが、昔の男の人は、野良仕事のないときは、家で酒を飲んだりしてくつろいでいることが多かったのではないでしょうか。それを主に女性が補う形で働いていたというのが、稲作農家を中心とする日本農業の平均的な姿だったと思います。しかし今は世知辛い世の中で、農業だけで暮らすということではなく、いろいろなことをやります。私は兼業農家擁護論者ですが、実際問題、農業をやっている方の多くは、コメ以外に野菜も作っている。また、24時間のうち、遊びの時間もあれば会社で働く時間もあり、かつ農業をやっている時間もある。6次産業の話については、そうした人間の暮らしを原点にいろいろな仕事のあり方を考えて、産業というものの配置を捉え直していく、そういう発想で申し上げたわけです。(*8)東畑精一(1899―1983)農業経済学者、東京大学農学部教授などを歴任。西村 周三

元のページ  ../index.html#75

このブックを見る