2025年の日本を俯瞰した調和的な社会経済モデルを探る
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43ればいいということです。今のまちづくりの最前線は、公共交通と、歩くのを基本にして、なるべく車が乗り入れないようにする。また、街の中でイベントを繰り返し、お年寄りが喜んで出てくるような社会をつくることです。これをやっているのはSWC(Smart Wellness City)という自治体の首長によるグループ(*3)で、新潟県の見附市が有名です。結局、人と人とが触れ合う賑わいのあるまちをつくれば、そのまちに住む高齢者は弱らないということです。これからの健康づくりは、まちづくりそのものだということです。4.ケア政策の転換と地域医療(1)ユニットケアの出現皆さん、ユニットケアはご存知でしょうか。昔の特別養護老人ホームは4人部屋か6人部屋でしたが、これをユニットごとのケアに変えました。個室に住み、顔見知りの職員がいて、ユニットごとに食堂に行き、顔見知りの関係性の中で食事をする。部屋には帰りたい時だけ帰るという形です。当時、多くの人は「個室だと閉じこもる」と言っていました。私が厚生省の老人福祉課長の時にも論争があり、私自身も迷いました。しかし、外とやまただし山義さん(*4)という偉大な学者がいて、6人部屋からユニットケアでの1人部屋に変えてタイムスタディをやったら、歩く歩数も喋っている会話の量も増えたのです。要するに、人はそれまでのライフスタイルを繰り返すから自立を維持する、ということが分かったのです。北欧で発見されていた事実ですが、すごく貴重な発見でした。地域包括ケアシステムを先取りした街づくり~千葉県「柏プロジェクト」の在宅医療・介護モデル~(*3) Smart Wellness City 首長研究会ウェブサイトを参照。(*4)元京都大学大学院教授、2002年死去。

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