2025年の日本を俯瞰した調和的な社会経済モデルを探る
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38今の病院医療は治す医療です。病気を治すために病院がすごく進歩をして、生存率が高まりました。親を入院させて、「先生、できる限りのことをしてください」と言っていたら、多くが病院で死ぬようになったわけです。しかし、治す医療だけで我々は幸せなのか。それが問われています。昭和40(1965)年頃は死亡者の3分の2が75歳未満でした。今は、75歳未満で亡くなる人は3割です。死亡数が一番多いのは、男性85歳、女性90歳です。長生き社会になりました。そういう社会においては、特に医療はかなりのシステム転換をしなければ乗り切れないということです。(3)自立度の変化パターンから見えるもの同僚の秋山弘子先生(*1)が「自立度の変化パターン」を調査されました(図1‐1、図1‐2)。自立度に関する男性の平均値データを見ますと、約1割はかなり高い自立度を維持していますが、約2割が60歳代でガタンと重い要介護になる。そして約7割が70歳代から徐々に自立度が下がっています。女性は男性のように高い自立度を維持する線がありませんが、自立度が低いわけではありません。ガタンと重い要介護になるのは男性の半分強で、それ以外の大部分の人は高いレベルで徐々に自立度が下がっています。女性は足腰の痛みから弱っていくことが推測されます。つまり、データが物語っているのはまず病気、特に生活習慣病が要介護の源泉になるということです。血管をいためると急速に要介護になります。逆に言えば、生活習慣病を予防できれば、75歳頃まではみんなが元気だということです。しかし、その次に、徐々に虚弱になるという老いの姿を示しています。ですから、できる限

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