2025年の日本を俯瞰した調和的な社会経済モデルを探る
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32のです。「若い女性が地方からどんどん東京へ行くんですよ。だって都市部の医療・介護需要が増えているんですもの」と。そういう発想が、増田報告には入っているのです。それは、私は違うと思います。増田報告が言うほどには、すごい都市集中は進まないと思っています。実際、政府の地方創生の考えの中でも、「どうやって地方へ人口を移動させるか」という方針が打ち出されています。しかし、これはそんなに簡単な話ではありません。もしも東京にたくさんの高齢者が残ることになり、そういう方へのケアの必要性が出てきたとします。従来の発想では、地方よりも東京の収入が高ければ、若い女性はどんどん東京へ行くと考えます。その考えでいけば、当然、地方の若い女性は減り、だんだんに子どもが減ります。ただ私自身は、この発想は当たっていないと思います。たぶん、ないと思います。勿論、そういう悪いスパイラルが絶対ないと言い切ることはできません。例えば北陸新幹線ができて便利になったら、石川や富山から東京への流出が起きるのかどうか。これは大変大事なテーマですが、私は地方の努力によっておそらく変わるだろうと思っています。この辺りについては書籍がたくさん出ておりますので、もしご関心があればお読みください。特に『縮小都市の挑戦(*3)』という本は、なかなか面白い地方再生の在り方を示唆しておられます。(*3)矢作弘(2014)岩波新書。著者は龍谷大学教授。

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