2025年の日本を俯瞰した調和的な社会経済モデルを探る
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15地域社会づくり~食・自然エネルギー・ケアでつながる新たな生活基盤の可能性を探る~」と題して、三河中山間地域で展開する――地域住民同士の相互扶助を駆動させる普遍的な原理を探る、という社会学的テーマも内包した――地域研究の概要を報告させていただきました。そして後半は、来場者にも参加していただき、会場を巻き込んだディスカッションを行いました(*1)。すると全体を通して、いくつかの課題が見えてきたのです。そのひとつが、本日のテーマになっている健康で活力ある高齢社会の実現と、保健・医療・介護・福祉の安定的かつ効果的な提供に向けた社会基盤の構築、とりわけ地域包括ケアという新たな概念を反映した地域社会づくりでした。この問題については、もうすこし議論を積み重ねていく必要があるとの判断から、今年度のセミナーに引き継ぐことにしたのです。そこで本日ご登壇いただくのは、昨年度と同様、当研究所の研究活動を陰になり日向になり支えてくださっている先生方であり、とくに社会保障と地域経済、そして地域包括ケアというテーマで議論を深めるには、余人をもって代えがたい日本の第一人者です。まず西村周三先生ですが、西村先生との出会いは、いまから約20年前に遡ります。その頃の私は日本の人口構造の変化と国民医療費の推移を分析していたのですが、既存の診療報酬制度による費用償還システムでは、医療制度および医療保険制度を安定的に維持していくことが困難になる時期が必ず到来すると考えていました。また医学・医療の進歩と医療経済の健全性を担保するうえにおいても、レセプトに記載される病名とは別に、世界保健機関(WHO)が発行する国際疾病分類(ICD)を用いてデータを収集することがベターではないかと感じていました。いずれにしても診療(臨床)データ

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