2025年の日本を俯瞰した調和的な社会経済モデルを探る
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120このところ、農山漁村地域で開催される住民集会や地域会議に出席することが多くなった。そのほとんどが高齢化と人口減少が著しい市町村である。話題はいずれも「地域再生」や「まちづくり」に関するもので、おしなべて参加者の平均年齢は高いが、都会の会議室よりも活発な議論が展開される。しかし地域の課題を抽出し、その解決に向けた意見交換を続けていると、必ずといっていいほど、どの地域も例外なく、デッドロックに陥るテーマがある。それが医療や介護の問題である。その理由は想像するに難くない。彼らの意識は、自分たちはあくまでサービスの受益者であって、創造の主体にはなり得ないからである。その理由は大きく二つある。わが国は、1961年の国民皆保険・皆年金制度の確立とそれにオーバーラップした高度経済成長で、今日では、ヘルスケアを含めて、保健、医療、介護、そして福祉がとても身近な存在になった。重層的な国の制度によって経済的な負担が軽減され、さらに地方自治体が実施する行政サービスも多岐にわたり、医療や介護への不安は払拭されたかのように見えた。しかし、それにより国民の健康意識が低下したことも否めない事実であろう。医療や介護や福祉を継続的に提供していくためには膨大な費用とマンパワーが必要になるのだが、精緻に設計された質の高い制度が、はからずエピローグ一般社団法人JA共済総合研究所調査研究部 主席研究員  川井 真

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