2025年の日本を俯瞰した調和的な社会経済モデルを探る
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115 二つ目のご質問についてです。私は、農業を株式会社化すればいいとは申し上げておりません。しかし大変悲しいことに、日本で農業に従事する人の数はどんどん減ってきて、今の専業農家の数は、全体の働く人の3%を切っています。そうしたことを考えた場合、おそらくこの国の農業をしっかりやっていくためには、単純な家族経営だけでは維持できないと私は思っています。 そのときに、ではどのような形態をとるのか。それは簡単なようで、乗り越えるのが本当に難しいのです。私は昔から農家に居候させていただいて生の声を聞いてきたので、それなりに実態を理解しているつもりですが、現場では隣と仲が悪いところが結構あります。「今日あいつは野菜を出して、すごく安く売ってしまった」というような話は、決して少なくありませんね。もちろんJAは今まで一生懸命頑張ってきました。けれども一方で、JAと距離を置いているような農家も、いろいろな品種改良をしたりして、生産性を上げるという観点からは優れた成果を上げてきたと私は思っています。この「生産性」という言葉は結構大事な言葉でして、ただ余暇的に農作業を楽しむような状況ではこの国の農業は細っていきます。やはりそこは一歩乗り越えなければいけませんが、このことは先ほどの私の、近隣の地域住民とコミュニティをどうやってつくるか、という話とすごく関係していると思います。 昔の日本は大家族を中心に、家族がいろいろな相互扶助の機能を果たしてきました。しかし悲しいことに、それは今、子どもが減って低下しているのです。そうすると、やはりご近所とは仲良くして、嫌なこともある程度は我慢する。「今日レタスを出すと絶対安くなるから、明日の方がいいや」と思ったとしても、そこで折り

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