2025年の日本を俯瞰した調和的な社会経済モデルを探る
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114かもしれませんが、もし今の医療市場に完全な市場原理の企業が入ってきたとしたら、その企業は収益率を上げるために診療報酬で儲かる地域を選択し、そこを徹底的に狙って、そこで収益が出なくなったら、ほかの地域に経営資源を移転させて収益を追うという行動をとる可能性があると思いますが、このような市場主義は日本には向きません。私はその意味では、日本の医療に対して市場原理主義が何か問題を起こし、混乱につながるということはないと、個人的には考えています。近隣農家と協力し、協同組合的な経営展開を考える必要があるのではないか西村: まず一つ目のご質問についてですが、結論を先に言うと、TPPについては、少なくとも医療分野に関してはあまり恐れることはないと思います。今ご質問いただいた話は、2年くらい前に「明日にでも通るのではないか」という議論をずっとやっていましたね。ところが、2年たってもまだ妥結していません。それは要するに、各国それぞれの事情を抱えているからです。特に2国間交渉ではなく多国間でやるので、そんなに簡単には進みません。妥結するとしても、当初言われた内容から少しずつ変更が加えられていくと考えられますので、そんなに大急ぎで大変なことが起きる心配はないのではないかと思います。 また、そのアメリカ医療についての本に出てくる話は、やや問題点が強調され過ぎているように思います。もちろん新自由主義的な考え方の方も一部おられますが、必ずしも支配的ではありません。以上のようなことからトータルではそれほど心配することはないのではないかというのが私の結論です。

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