2025年の日本を俯瞰した調和的な社会経済モデルを探る
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106のかを教えていただければと思います。 10年前にさかのぼってみると、我々自治体職員は10年後のことも想定していろいろな政策をとってきました。しかし実際に10年たった今、どのようなことに困っているかというと、まず家族構造や機能が大きく変容し、息子さんや娘さんが市外や県外に行ってしまった。そして長命化し、80代、90代の方が認知症を患って高齢者だけで生活しています。そうなってくると、面倒を看てくれる方がいない。コミュニティもご近所同士の付き合いの希薄化が進んでいます。いざというときにお子さんたちはすぐには戻れない。で、どうなるかというと「全部、市役所、地域包括支援センター、お医者さん、施設が看てくれ」という問題が起こってきます。 もうひとつの大きな問題は、身寄りのいない高齢者が増えたことです。そうなると、医療時の同意に関して問題が出てきます。入院したり、施設に入所したりするときにも非常に困ったことになります。高齢化により、たちまち本人を中心にして手のつけようのない困ったことが起こってしまいます。さらに高齢化が進んだ10年後にはどのようになるのか。先生方に予見的なことを教えていただけたらと思います。地域の自立性を活かし互助を拡張する雰囲気づくりを西村:医療分野については、辻先生と真野先生の方がお詳しいと思うので、私は少し別の角度からお話しさせていただきます。 まず、間違いなく一番大変になることは、行政サービスに対する過大な期待です。この「過大」というのが難しいのですが、従来どおりの期待なのに、人が減ったために周りで助ける人がいなくなり、その結果、同じサービスをするのにすごいコストがかかる。今までと同じコス

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