自然と人間の協働による永続的な地域社会づくり
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95 その中で、ちょっと手前みそなのですが、いちばんいい教育は「聞き書き」をやらせることです。聞き書きって、聞いて書くだけと思うでしょう。例えば、岐阜県に加かしも子母という東とうのうひのき濃檜で有名な集落があります。そこは、嫁さんで入って来た女性たちには、じいちゃん・ばあちゃんの聞き書きを必ずさせるのです。そうすると、じいちゃん・ばあちゃんにとっては、自分の自分史が残りますから、それをつくってくれた子に対しては、まさに孫娘になっていくのですね。 それから、もう一つ、「聞き書き」というのは、相手の言葉だけを聞いて、それを書き止めていくので、その相手に重なっていくという行為になります。そうすると感情が重なるのです。ルポや取材だと、聞き手側で文章をまとめられるのですが、「聞き書き」というのは話し手側の話したことしか書けないのです。そうすると、話し手側に自分を重ねていく行為になるので、外からIターンで入って来た人たちと、じいちゃん、ばあちゃんたちの接点、要するに心の接点ができていくのです。その中間に、ただニーズとシーズがあるからというのではなく、何かお節介のシステムとお節介な人が必要なのです。そのあたりがだんだん地域に育ってきているように感じています。(*8) URL http://www.oiden-sanson.com/澁澤 寿一

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