自然と人間の協働による永続的な地域社会づくり
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87 実際、これからの人たちは、農業の再生と第一次産業への意識も含めて、何をよりどころにして、どのような方向に進むと見ていらっしゃいますか。中沢:昔の若い人たちはだいたい左翼に行ったのですが、今の若い人たちは保守、右翼のほうに非常に関心がある。そして、それを憂う人たちもいる。ですが、僕などが見ていると、ちょっと過激な国粋主義のようになってしまっている部分もあるけれども、実はこの若者たちは、日本人の先祖返りのほうへ向かっているのではないかという印象を、むしろ持つのです。日本人はもともと半農半漁で、専業ではなく、なんでもやる「百姓」だった中沢:宮本常一さんたちの研究所がやっていたことは、非常におもしろいことですが、宮本常一さんの考え方自身、よく見てみると、日本人というのは、もともと半農半漁なのだということを強調しているのです。宮本さんの研究所にいた網野善彦(*7)さんなども、日本人というのは、もともと海民で、半農半漁なのだと。半農半漁ということは、専業農業などということはやっていなかったのだということを言うのです。 農業をやる日本人がどこから渡って来たかというと、南のほうから渡ってきています。その人たちの食生活や生活形態、ものの考え方をよく調べてみると、だいたい半農半漁なのです。これを網野さん的に言うと「百姓」と言ったというわけです。「百姓」というのは、何でもやる、つまり、どちらでもやるのですね。その中で内陸部に入っていき、土地を持った人たちが、だんだん専業化した農民になっていった。でも、もともと日本人というのは半農半漁なのだと。

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