自然と人間の協働による永続的な地域社会づくり
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85のままだったら自分がだめになるといって地域に入ってきます。 それなのに誰も食えなくなっていないのです。地域に入ると、お金になるもの、ならないものも含めて、いろいろな仕事があります。それをメニュー化しようといって、メニュー化しました。全国で「百業ネットワーク」というものをつくり、地域にそれぞれどのようなものがあるか。月3万円の仕事から、月5万円、8万円の仕事、それを自分の好きなように組み合わせることによって、月20万円の収益が得られる。 ところが、やってみたら、そうではないことがわかりました。人が地域に入っていくと、その人の個性によって、来る仕事が異なる。それはまさに自然や人との関係性で決まるので、画一化できないのです。20家族で50人くらいの人たちがいて、自然とそれぞれに役目ができていきます。にも関わらず、彼らは、まちに行くと、自分の役目が見えなくなってしまう。とくに、一昨年くらいに65歳を迎えた団塊の世代は、今、行き場がないのですが、その人たちも少しずつ地域に入ってきています。 彼らは農業を専業でやりたいわけではなくて、〝農的暮らし〟がしたいのです。要するに自然と触れている暮らしがしたい。コンビニにも買い物に行くし、一般的な経済活動もやるけれども、「自然」にも触れたい。農協に出せるほどではないけれども、自分の食卓に並ぶ野菜くらいは自分でつくれるようになりたい。兼業農家になりたいということかもしれませんが、とにかくそのようなニーズがたくさんあるということがわかりました。こうした人たちが何となく暮らせるという意味では、日本という国は豊かなのかもしれませんし、たぶん彼らのような人たちが新しい日本社会のモデルをつくっていくのだろうと思っています。

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